日中、危険な“腹の探り合い” 中国軍機の異常接近受け、海外研究者が懸念

 24日午前、東シナ海上空で日本のOP-3C画像情報収集機とYS11EB電子測定機2機に対し、中国のSU-27戦闘機2機が、最短約30mの至近距離まで接近した。

 事件後、両国とも、相手国を非難する声明を出した。日本側は、「常軌を逸しており、偶発的な事故につながる危険な行為」だとし、中国側は、日本が「危険な行為を犯し、国際法に違反した」と訴えている。

【腹の探り合いを続ける日中】
 菅義偉官房長官は26日、24日の事件について「不慮の事故に繋がる非常に危険な行動」だと中国を非難し、日本側に非があるとする中国政府の主張を否定した。「(偵察機が)合同演習の妨げとなる危険を犯したとの主張は全くの誤りだ」(フィナンシャル・タイムズ紙)。

 中国側は、「日本の自衛隊機が、演習中の空域に許可なく侵入し、危険な行動をとった。これは国際的な法と基準に大きく反するもので、誤解や空中での事故でさえ容易に引き起こしかねない」(フィナンシャル・タイムズ紙)と主張していた。

 安倍首相は26日、小野寺五典防衛大臣と協議後、日本政府は同空域へより多くの偵察機を配置することをためらわない、と述べた。「監視活動と、外交機関を通じての断固たる抗議を続ける必要がある」という。

 上海大学の倪乐雄教授(軍事専門)は、「非常にまれで、危険な事態だ」「日中両政府とも、相手の挑発に対して柔軟な対応はしない、という姿勢を示そうとしている。(そうやって)相手の腹の探り合いをしている」(ブルームバーグ)と、両国政府の駆け引きを懸念している。

 ただ、尖閣諸島周辺での日中の対立は、危険をはらみつつも、対処しやすい問題に落ち着いてきている、と専門家は見ている(フィナンシャル・タイムズ紙)。実際、尖閣諸島領海への中国船の侵入は、昨年より減少傾向にあり、5月は今のところ1度だけのようだ。米国の中国研究者の調査結果を同紙は伝えている。

【ASEAN諸国と組んで中国に対抗しようとの目論見】
 安倍晋三首相は23日、ウォール・ストリート・ジャーナル紙のインタビューに対し、「日本は、現状を力や威圧で変えようとすることを断じて許さない」と答えた。首相は就任後、中国の積極的な勢力拡大に対抗するため、アジアのリーダーとなることを熱心に求めてきた、と同紙は報じている。

 安倍首相の発言は、中国機の接近が起きた前日のものだ。24日の事件は、中国の脅威が高まり、さらに強硬な外交方針をとるしか道がないという問題を強調することになった、と同紙はみている。

 安倍首相は、30日からシンガポールで開催される「2014シャングリラ・ダイアログ(第13回アジア安全保障会議)」の基調演説を行う予定だ。日本の首相としては初めてとなる。このような同首相の積極的な動きは、日本の役割が大きくなっていることを表しているようだ。安倍首相は、南シナ海の領有権問題で中国と対立しているフィリピンやベトナムを支持する、と繰り返し公言している。

 中国はこれを非難。中国外務省の洪磊報道官は23日、「日本の真の目的は、自国の政治目的を隠すため、南シナ海での問題を巻き込むことだ」「中国は日本に全ての挑発的な言動を止めるよう強く求める」と述べた。

 安倍首相は、中国と対立する国々に、謙虚で、しかしその意味はとても大きい、海上防衛の援助を申し出てきた。2013年12月には、10隻の巡視船をフィリピンに提供。同月、ベトナムにも同様の援助を申し出た。

 しかし、ここ数週間のベトナムと中国の対立激化について、自衛隊の船をこの海域に派遣するという明言はない。首相は、「地域の安定と平和に貢献できるとの見方に基づいて、船の派遣を検討するつもりだ」しかし、「派遣するための船はまだない。だから明日には準備ができるということではない」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)と述べた。

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Text by NewSphere 編集部