陸・海・空自衛隊、“最難関”の離島奪回訓練実施 日本の防衛力の進化を、元米海兵隊員が指摘

 22日、離島奪還を想定した自衛隊の訓練が、鹿児島県奄美大島沖の無人島である江仁屋離島(えにやばなれじま)で行われ、報道陣に公開された。

 陸海空の3自衛隊は10日から27日にかけて合同訓練を行っており、海上自衛隊の艦船4隻、航空自衛隊の戦闘機やヘリコプターなど11機、陸上自衛隊の離島防衛部隊など、合わせて1300人が参加している。

【中国に占領された後の尖閣奪還を想定か】
 訓練のシナリオは、他国によって日本の離島が占領された後、それを奪還するための上陸作戦となっている。尖閣諸島周辺で、領海侵入など活動を活発化させている中国をけん制する内容と見られる。

 ロイターによれば、岩崎茂統合幕僚長は「まだ始めたばかりで、われわれの島しょ防衛能力は十分でないが、離島防衛には絶対不可欠な能力であり、今後も訓練を重ねていく」と語った。

【中国の反応】
 ロイターによると、中国外務省の報道官はこの訓練を非難し、「アジアの近隣各国は日本の軍事的な行動を強く懸念している。日本は地域の平和にもっと役立つことをすべきだ」と述べた。

【海外紙・アナリストの見方】
 ロイターは、日本は広大な領海を持つにもかかわらず、自衛隊は2012年まで特筆すべき上陸部隊を持っていなかったと指摘。背景には、戦前の陸軍と海軍の対抗意識の名残りで合同訓練が困難だった影響、というアナリストの見方を報じている。

 同紙はまた、元アメリカ海兵隊員で日本の戦略を研究しているグラント・ニューシャム氏の言葉を紹介する。

「陸海空合同による上陸作戦は最も難しい軍事作戦の1つである。日本としてはアメリカが行動を共にしてくれるのが理想ではあるが、自国の防衛のために必要となれば独力でも行うことを示しつつある」

 陸上自衛隊は離島作戦のために、ティルト・ローター機MV-22オスプレイとAAV7水陸両用強襲輸送車をアメリカから購入が検討されている(編注:台湾のウォント・チャイナ・タイムズは「購入済み」とする専門家の発言を報じているが、実際は、購入が検討されている状況)。

 またロイターは、先月防衛省が、台湾に近い与那国島にレーダー基地の建設を始めたことを紹介。1972年の返還以降、沖縄県に自衛隊の基地が新設されるのは初めてだという。

 台湾のウォント・チャイナ・タイムズは、日本が奄美諸島で上陸訓練を行うのは、東シナ海で中国とロシアが海軍合同演習を行うのに応じたものだと見る。

 同紙によれば、ロシア科学院極東研究所、日本調査センターのヴァレリー・キスタノフ氏は、今回の自衛隊の訓練は近年でも最大のものだとしつつ、これには政治的な理由もあるという。中国とロシアが関係を密にしている昨今、日本が「怖じ気づいていない」と示すことが、極めて重要なのだと同氏は述べている。

※ティルト・ローター機MV-22オスプレイについて、本文中「購入済み」は「購入が検討されている」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。本文は訂正済みです。(5/23)

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Text by NewSphere 編集部