イスラエル、日本との“核対策”協力に期待 イランを北朝鮮になぞらえ、脅威強調

 来日中のイスラエルのネタニヤフ首相は12日、安倍晋三首相と会談し、中東和平に向けて協力体制を強化していく方針で合意した。その中で、イランの核開発問題を北朝鮮の核の脅威になぞらえ、日本とイスラエルは「隣国による核の脅しという共通の課題を抱えている」などと述べた。

 イスラエルメディアをはじめとする海外メディアは、主にこの核開発問題に着目して報じている。

【イランを北朝鮮になぞらえて批判】
 安倍首相は会談で、北朝鮮の核及び弾道ミサイルの開発は、「今そこにある危機だ」という見解を伝えた。ネタニヤフ首相はこれを受け、共同記者会見で「全身全霊でその意見に賛同する。同じ言葉がイランの核開発計画にも当てはまる」と述べた。ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)などが報じている。

 イスラエル紙『ザ・タイムズ・オブ・イスラエル』によると、ネタニヤフ首相は会見で「北朝鮮がそうであったように、イランは核開発能力を維持しながら国際社会による制裁を弱めたいと目論んでいる」とも述べた。そして、「(北朝鮮・イランという)代表的なテロリスト国家に核兵器を持つ力を与えてはならない」と強い口調で訴えた。

 今回の会談では、自衛隊とイスラエル軍の協力関係を拡大していく方針でも合意した。同紙によれば、近く自衛隊幹部のイスラエル訪問が実現する見込みだという。同紙はこれについて、「敗戦から70年近くたった今、安倍政権はより幅広い軍事力を得ようとしている」とし、「友好国への幹部の派遣は、そのごく初歩的な“赤子の一歩”だろう」と記している。

【イラン大統領「核のアパルトヘイトだ」】
 WSJによると、ネタニヤフ首相は記者団に対し、現地時間13日に予定されている、ウィーンでの「P5+1」(国連常任理事国+ドイツ)とイランとの核開発交渉に「期待を寄せている」と語った。

 一方、ザ・タイムズ・オブ・イスラエルの報道によれば、イランのロウハーニー大統領は、核開発の中身は平和利用目的の濃縮ウランの生産であり、西側諸国の開発中止の要求は「核のアパルトヘイトだ」と糾弾した。そのうえで、開発計画について一層の透明性を持たせる考えを示した。

 P5+1との会談については「透明性を持たせること以外に交渉のテーブルに載せる材料はない。核技術の分野では一歩も引かない」などと国営放送のインタビューで述べたという。

【「対北朝鮮型」の交渉でイランの核開発問題を解決?】
 ワシントン・タイムズは、こうしたイランの強硬姿勢と西側の要求について、「一致する点がないのは明白だ」と論じる。その一方で、アメリカ、日本、韓国が中心になって行ってきた対北朝鮮の交渉が、モデルケースになる可能性に言及している。

 同紙は「ネタニヤフ首相が日本を訪れ、北朝鮮とイランの類似性を強調したのは驚くべきことではない」として、首相の次のような発言を引用している。

「イスラエルと日本は共に民主的で先進的な技術を持つ社会だ。日本は、核兵器を持つ粗暴な北朝鮮政権と対峙している。我々も、核兵器を持ちたがっているイランに直面している。彼らは協力関係にあるが、我々もまた、協力しなければならない」

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Text by NewSphere 編集部