消費者金融の上限金利引き上げか 自民党の規制緩和検討で市場は一喜一憂…海外紙の予想は

 2006年、消費者金融業者への利息の過払いが問題となり、政府は消費者金融業者の規制を強める法改正を行った。その後最高裁が20%を超える金利は違法であると判断し、貸金業者は利用者に払い戻しを行っている。2010年には金利の上限を20%とし、年収の3分の1を超える貸し付けを禁止する法律が成立した。

 しかし、2012年の選挙で、自民党はこの規制の緩和を公約に掲げた。今年に入り4月24日、自民党平将明衆議院議員が「貸金業の規制緩和を検討するための小委員会を5月に立ち上げる。金額を年収の3分の1と決めた上限を撤廃し、貸金業界を活発化するためにも、貸出上限金利を20%から29.2%に引き上げる必要があり、議論を始める」と発表した。しかし、4日後の28日、麻生金融相はこの規制緩和を否定した。

【自民党の思惑と消費者金融の株価】
 フィナンシャル・タイムズ紙では、日経新聞の報道を引用し「自民党はアベノミクス以後銀行の貸付業務に熱心で、(中小)企業が利用しやすい環境を整えるため、今後は貸金業者の規制を緩和する方向に動くだろう」と今後の動きを予想した。株価は平氏の発言を受け、オリエントコーポレーションは14%、アプラスは13%アップするなど、各消費者金融業者の株価は軒並み上昇した。

【麻生金融相の発言が株価上昇に水を差す】
 しかし、この直後の4月28日、麻生金融相が国会で「貸金業者の金利規制緩和は直ちに行わない」と答弁したことを受け、株価は急落。アコムは2011年3月以来の下げ幅で11%下落し348円、アイフルは2013年5月以来の下げ幅で13%下落した。

 ブルームバーグではこの麻生金融相の発言をうけた動きを重点的に報道している。

 この一連の動きの解釈は、アナリストでも意見が分かれる。ブルームバーグで紹介された2人のアナリストの意見は対照的である。ファイブスター投信投資顧問・大木昌光ポートフォリオマネジャーは「麻生氏の発言は貸金業者の株を明らかに下げた。規制緩和については自民党内でも意見が分かれる。しかし、自民党で規制緩和に関し検討が始まるのは、貸金業界にとっては良いことだ」と述べた。一方で、クレディ・スイス証券山中威彦アナリストはアコムについて「アウトパフォーム」から「中立」に格下げした。

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Text by NewSphere 編集部