日本の追加制裁に、ロシアが報復を示唆 日本、欧米とロシアの“板挟み”、日本の出方に海外注目

 ロシア外務省は29日、ウクライナ危機を巡る日本の追加制裁に失望の意を表明し、「報復」を示唆するコメントを発表した。ロイターなどが報じている。

 現地メディアなどは、日本は石油・天然ガスの輸入でロシアへの依存を強めていると指摘。にもかかわらず、制裁強化を求めるアメリカ・EUの圧力に屈した結果、これまで以上に「難しい立場に立たされた」などと警告している。

【ロシア外務省は「報復」を示唆】
 外務省は同日、ロシア政府関係者など23人のビザの発給を停止する追加制裁を発表した。対象者の名前や肩書は明らかにされていないが、モスクワ・タイムズは「日本の外務省関係者によると、アメリカとEUがまとめたリストに基づいている」と報じている。

 この前日に発表されたアメリカの追加制裁では、ロシア最大の国営石油会社『ロスネフチ』会長で、プーチン大統領とも関係が深いイーゴリ・セーチン元副首相らがビザ発給停止と資産凍結の対象になっている。ロシア外務省は、こうしたアメリカとEUの追加制裁を「冷戦下の戦術だ」と非難。そして、日本の制裁は「西側の圧力に屈したものだ」と批判した。

 ロイターによると、ロシア外務省は日本の追加制裁について、「東京の決定には失望した。(我々の)報復を受けるのは極めて自然な流れだ」とコメントし、何らかの「報復措置」を示唆した。また、「(日本の制裁は)明らかに外圧によって行われたものだ。ロシアとの関係を重視する日本の態度に反する。我々との話し合いにおいて、制裁は逆効果だ」などと牽制した。

【露紙「日本はロシアとの実務的な関係を維持しなければならない」】
 モスクワ・タイムズは、2011年の福島第一原発事故に端を発するエネルギー需要の増加に伴い、日本の石油・天然ガスの供給元としてロシアの存在感が急激に高まっていると指摘。そのため、「日本はロシアとの実務的な関係を維持する必要がある」と論じる。

 一方、アメリカとEUが今後さらに制裁の強化を求めてくることも予想される。同紙は、安倍晋三首相が同日、10日間の欧州訪問に発ったことを挙げ、「安倍首相は、ロシアを非難するほかのG7首脳との間で(対露政策で)バランスを取ることに苦慮するだろう」と記している。

【日本はエネルギー政策を優先して独自路線に向かう?】
 ドイツの国営放送『ドイチェ・ヴェレ』も、こうした日露関係を俯瞰した論説記事をニュースサイトに掲載している。

 財務省の報告によれば、日本のロシアからの鉱物性燃料の輸入は、今年3月の時点で2244億円に達し、前年比で31.5%増加した。原油はおもに東シベリアから太平洋に達するパイプラインで、液化天然ガスはサハリンなどから日本に入ってくる。また、三菱商事と三井物産が合弁で、サハリンで新しいプラント開発に出資していることなどもドイチェ・ヴェレは紹介する。

 対するロシアも、制裁強化によるEU圏内への輸出減少を見越して「東に目を向けている」とドイチェ・ヴェレは記す。その一例として、今回のアメリカの制裁のターゲットになったセーチン氏が、今年3月に東京でロシア向けの投資フォーラムを開き、「日本の投資家たちに、石油とガス部門で協力体制の強化を約束した」ことが挙げられている。

 記事は、日本が今後、この件では脱アメリカ・EU路線を歩む可能性に言及する。「たとえ北方領土問題や中国との領有権問題をリスクに晒したとしても、日本はウクライナ問題をもっと独自のやり方で解決しようとするかもしれない」

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Text by NewSphere 編集部