中国船の領海侵入が減少…尖閣“現状維持”のメッセージか? 海外識者がねらいを分析

 尖閣諸島周辺の日本の領海に侵入する中国巡視船の出現頻度が、昨年10月以降、目立って減少しているという。12日付のワシントン・ポスト(電子版)が報じている。オバマ米大統領の訪日が今月23日に迫る中、複数の海外メディアが、日中関係に関連した報道や論説を展開している。

【「当面は尖閣問題をエスカレートさせたくない」という中国側のサインか】
 中国巡視船の出現頻度を分析したのは、中国政治を専門とするマサチューセッツ工科大学(MIT)のテイラー・フラベル准教授と、ハーバード大学教授のアラステア・ジョンストン教授だ。日本の海上保安庁が発表した資料をもとに、ワシントン・ポスト電子版が展開するブログ『Monkey Cage』に分析記事を寄稿した。

 それによると、尖閣諸島から12海里以内の海域で行われている中国船のパトロールの回数が、2013年の10月を境に大幅に減ったという。それ以前は週に4回ほどの頻度だったが、10月に入ると中国船がまったく現れない期間が3週間以上続き、以降は今月4日まで平均して2週間に1回ほどに落ち着いたという。

 両氏は、このデータのみで中国の意図を決めつけるのは危険だとしながら、「(尖閣問題を)当面はこれ以上エスカレートさせたくないという、中国側のサインなのではないか」という見方を提示する。

 ただし、中国領海外縁の「接続水域」でのパトロール回数は逆に増加しており、中国はいつでも尖閣諸島海域に進出できるというメッセージも維持しているとも、両氏は指摘する。

【米軍司令官の日本支援発言に中国メディアは猛反発】
 その一方で、中国当局やメディアによる“言葉の攻勢”は弱まる気配がない。BBCは14日付で、日本に駐留する米海兵隊第3海兵遠征軍司令官のウィスラー中将の発言が、中国メディアの集中砲火を浴びていると報じた。

 BBCによると、「尖閣諸島が外国の力によって攻撃された場合、我が部隊は再奪取する用意がある」というウィスラー中将の発言を人民日報が報じた。これを受け、同紙の英語版『グローバル・タイムズ』は、「中国が魚釣島(尖閣諸島)を占領するために軍を送るという前提からして間違っている。そのため、この日本支援発言は意味がない」などとする中国国立防衛大学教授のコメントを掲載した。

 さらに、人民日報系のニュースサイト『Haiwai』は、「アメリカは中国と日本の間に長期的な緊張関係をわざと作り上げるために尖閣問題を利用して“火遊び“をしているに過ぎない」と持論を展開。「“火遊びをする者は火傷をする”という古い格言を忘れてはならない」と日米を牽制した。

 一方、米ニュース番組『PBSニュースアワー』の公式サイトは、オバマ大統領の訪日をテーマにした14日付の論説記事で、安倍政権は「尖閣で軍事衝突が起きた場合、アメリカが助けに来るという確約を、直接オバマ大統領の口から聞きたがっている」と論じている。当のオバマ大統領も、「アメリカは日本に対する責任を政策の核心として重視していることを、(訪日で)示さなければならない」と語ったという。

【リスクを抑えて日本を攻撃し続ける中国の戦略か】
 中国の尖閣諸島海域でのパトロールの縮小と、メディアを通じた激しい日米批判の姿勢は、一見矛盾しているようにみえる。これについてディプロマット誌は、先のワシントン・ポストのブログ記事を元にした論説記事で、次のような見解を述べている。

「中国の指導者たちは、現実世界での対決から“言葉の戦争”に主眼を移したのかもしれない。別の言い方をすれば、これが、リスクを最小限に止めながら日本への攻撃を続ける中国のやり方なのかもしれない」

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Text by NewSphere 編集部