日本ODAのベトナム賄賂問題、両国が迅速に対応 海外紙「ベトナムは日本のODA消極化を懸念」と分析

 読売新聞は先週3月21日、ベトナム国内における日本の政府開発援助(ODA)によるプロジェクトに関する贈収賄を報じた。これを受けてベトナム政府、運輸省は早急に調査に乗り出した。海外メディアはベトナム側の対応と国内の反応を報じている。

【ODAプロジェクトに関わる賄賂】
 読売新聞社によるとJTCの柿沼民夫社長は、ODA資金によるプロジェクトを42億円相当にすることを交換条件に、同社が8,000万円の賄賂を支払ったことを認めた。他にもODA 資金のプロジェクトを請け負うためにベトナム、インドネシア、ウズベキスタンの公務員に賄賂を渡した。2008年2月から今年までの賄賂の総額は、1億3,000万円にも及ぶという。

 報道を受けて、ベトナム運輸省は日本交通技術株式会社(JTC)に賄賂を受け取ったベトナム鉄道役員の特定と詳細な情報提供を求める書面を送ったと、ベトナムの新聞『Tuoi Tre』紙は報じている。

 すでに4人の鉄道役員が停職処分になり、問題のプロジェクトとJTCに関する責任についてのレポートの提出を言い渡されているという。処分を受けたひとりは『Tuoi Tre』紙に、問題になっているプロジェクトはハノイのYen Vien-Ngoc Hoi鉄道であることを明かした。

【ベトナム政府の対応】
 Nguyen Ngoc Dong交通運輸次官は、現地時間火曜日にベトナムを出発、東京の税務当局、東京検察の特別捜査チーム、読売新聞と直接やり取りするために来日した。日本からの収賄者のリストを求め、至急所轄官庁に提出するとした。運輸省の視察責任者Nguyen Van Huyen氏によると、リストが発表されれば調査チームが個別的に対応していく。今後JTCに関わるプロジェクト全ての調査が行われ、関係するプロジェクトの入札が適切な規則に基づいたものかどうかも調べるという。

 『Tuoi Tre』紙によると、現地時間の25日火曜日ハノイで、ファン・ミン・ビン、ベトナム副首相兼外相が福田博大使と会談した。副首相は、近年日本のODA資金による建設事業や開発事業への援助に感謝する意向を強調したという。また安倍首相が、ベトナムの持続可能な開発のためにODA政策において同国を重要なパートナーとして位置付けると表明したことを評価した。

 その上で、今回の件に関して首相が国内の関係各社に、日本関係者との連携を図るよう指示したことを伝えた。ベトナム政府が適切な法律に基づいて徹底的に調査する姿勢を示していることを主張し、日本側にも早急に詳しい情報の開示を要請したという。これに対し、福田大使はベトナム側の迅速かつ積極的な応対を評価した。また事件解明に向けてベトナムとの緊密な連携体制を約束した。

【ベトナム国内の反応と今後の両国の対応】
 オンライン新聞『VietNam net』は、今回の賄賂事件がソーシャルメディアや国営メディアで、公務員の間で白熱した議論を呼んでいると報じた。経済学者Le Dang Doanh氏は米ニュース番組ボイス・オブ・アメリカ(VOA)に、「非常に遺憾で恥ずべきことだ」と述べた。「今回の件は日本とベトナム間の連携と、日本のODA資金に影響を及ぼすことになった。良好な相互関係が続いてはいるものの、ODA資金が税金から出ていることを考えても、今回のことをきっかけに日本が消極的な対応になる可能性がある」と指摘した。

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Text by NewSphere 編集部