初の日米韓首脳会談、米国の緻密な計算が背景に 韓国紙は、関係改善に期待薄

 25日、オランダ・ハーグでの核安全保障サミット閉幕後に、米大使公邸で安倍首相、朴槿恵・韓国大統領、オバマ米大統領が会談した。安倍首相が2012年12月、朴大統領が13年2月に就任して以来、従軍慰安婦問題などの対立で、いまだに実現していなかった日韓首脳会談だ。ただし、対立点である歴史認識問題などについては、触れない約束だったようだ。

【折れられないナショナリストたち】
 日韓首脳の不和は、両同盟国に団結して中国や北朝鮮を抑えさせておきたいアメリカとしては、悩みの種であった。昨年12月にはバイデン米副大統領が両国を訪問し、「緊張を煽る言動を避けるよう、安倍と朴両方に促した」が、安倍首相は同月のうちにそれを無視して靖国参拝を敢行、日韓関係はいよいよ悪化していた、とニューヨーク・タイムズ紙は解説した。

 両首脳ともナショナリストで、その支持基盤は互いの友好を望んでおらず、特に朴大統領のほうは、安倍首相が「悔い改め」て初めて信頼は回復できると主張していた。

【気は進まないが断るわけにもいかず】
 同紙は、「両者に自ら関係を修復するつもりがないと確信したホワイトハウス」が、今回のサミットでの三国会談を提案したと報じている。アジアでなくヨーロッパ、それもハーグという国際司法にゆかりの都市で、あくまでも核不拡散というテーマでなら、会談は可能だという計算だったようだ。3月6日、オバマ大統領は安倍首相に電話で打診し、さらに同日、キャロライン・ケネディ駐日米大使が安倍首相を昼食に招いた。

 各紙によると、4月にオバマ大統領の両国訪問を控えていることから断りづらく、またその訪問に先立ってオバマ大統領との準備会合という口実ができることも大きかったようだ。元々オバマ大統領は、昨年10月に政府閉鎖のためキャンセルされていた、マレーシアとフィリピンへの訪問を埋め合わせるつもりであった。しかし旅程に日本が追加され、さらに、「韓国人と支持者」から、日本に行くならなぜ韓国を無視するのかと訴えられたことで、訪韓も追加されていた。

【ありがちな決まり文句】
 両首脳はオバマ大統領を間に挟んで記者会見に臨んだ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、オバマ大統領は「本日の会談はアジア太平洋地域における米国の重要な役割を反映していますが、その役割は、我々の同盟関係の強さあってのことなのです」、朴大統領は「心から、この会議が核戦線において私たち三国の協調と強さ、協力を再確認する機会を提供することを願っています」、安倍首相は「非常に有意義かつタイムリー」な会議で朴大統領と「会えてとてもよかった」、などと語った。

 しかし、いかにもありがちな決まり文句と取ることもできそうである。朝鮮日報も、「韓日関係の進展につながるような姿をはっきりと目にすることはできなかった」と評している。ニューヨーク紙は、「ジュニアパーティーのようなものです。キャシーはジェイミーと一緒に座りたがりませんが、サリーがやってくるなら一緒に座っていられるのです」との、ジョージ・W・ブッシュ政権の上級アジア顧問マイケル・J・グリーン氏の評を伝えた。さらに、会談の出ばなをくじくかのように23日、自民党の萩生田光一総裁特別補佐が「河野談話」の見直しに言及した件にも触れている。

 クリスチャン・サイエンス・モニターは、いずれにせよ来年は日韓国交回復50周年記念にあたるため、両国は夏ごろには本気で関係修復を考え始めなければならなくなるだろうと指摘している。

 一方、韓国の朝鮮日報は、「韓国が直ちに安倍首相と手を結ぶのは難しい」と悲観的だ。韓国側がこだわり続けている歴史問題については話し合われなかったため、日韓関係の進展にはつながらない。

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Text by NewSphere 編集部