「河野談話継承」で、日米韓首脳会談が実現か? 批判一辺倒の韓国報道にも変化の兆し

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は15日、いわゆる従軍慰安婦問題への軍の関与を認めるなどした「河野談話」を継承するとした安倍晋三首相の発言を「幸いだ」などと歓迎した。安倍首相の歴史認識に関連する発言を、朴大統領が肯定的に評価したのは初めてのことだ。

 これを受け、日韓やアメリカのメディアは、今月24、25日にオランダ・ハーグで開かれる核安全保障サミットで、日米韓の首脳会談が行われるのではないかと、日韓の「雪解け」の始まりを予測する報道を重ねている。

 ただし韓国の主要メディアは、安倍首相の河野談話継承発言に対し、「ただちに韓日関係が改善されるわけではない」「発言の真正性は疑わしい」「言葉ではなく、行動で示せ」などと相変わらず厳しい姿勢も見せている。

【韓国大統領府「日本側が誠意を示せば対話に応じる」】
 韓国の聯合ニュースによると、朴大統領は、安倍首相の河野談話継承発言を「遅すぎたとはいえ、日本のリーダーがそのような立場を示したのは幸いだ」と語った。さらに、従軍慰安婦問題に関する韓国側の「長年の不満」を解決し、「韓国との関係を前進させることを望む」と、日本側に注文をつけた。

 これを受け、韓国大統領府は17日、「日本が誠意を示し、建設的な話し合いを可能とする状況を作れば、我々は対話に応じる用意がある」などと記者団にコメントした。

 大統領府の報道官は、「韓国は日本との首脳会談の扉を開けている」としながら、「誠意」あるいは「誠実なステップ」などという表現を使い、従来と変わらず、対話のテーブルにつく前提条件として日本側の歴史認識に関する譲歩を求めた。同メディアによると、報道官は、日本側に求める「誠意」なりの「真剣さの尺度」については明らかにしなかったという。

【ハーグでの日米韓首脳会談に期待】
 こうした両国の動きを受け、多くのメディアは、長く閉ざされている日韓首脳会談の扉が開かれると予測する。特に、アメリカが中国に対する安全保障上の理由から日韓の融和を強く求めていることから、近く3ヶ国の首脳が集うハーグで、日米韓の三者会談が実現するのではないかという見方が広がっている。米国務省も、日韓両国の対応を「前向きな進展」と歓迎しているという。

 韓国の主要メディアも、日韓首脳会談の実現に期待を寄せる。「今のような韓日関係の事実上の断交状態が今後も続くのは決して望ましいことではなく、この認識は韓国でも徐々に広まりつつある」(朝鮮日報)、「相手がいる外交ゲームで100%完勝や完敗はありえない。対中牽制のために韓日米共助が、どの時より切実だと見ている米国の和解の圧力も無視し難い」(中央日報)などと、各紙の社説には、日本との関係改善に向け、これまでとは異なる肯定的な言葉が並んでいる。

【韓国メディアは安部首相の真意には懐疑的】
 一方で、安倍首相の発言自体に対しては懐疑的な見方がいまだ支配的だ。韓国各紙は、安倍首相がこの問題で軟化したのは、アメリカの強い意向を受けてのもので、心からの謝罪・反省の意思はないという論調を展開する。

 朝鮮日報の社説は、安倍首相が「いわゆる河野談話」という表現を用いたことにこだわり、「相変わらずこのような言い方をしているようでは、その趣旨を全体として本当に受け入れたとは考えにくい」と切り捨てる。また中央日報は、菅義偉官房長官が河野談話の検証作業を「予定通りに進める」という立場を明確にしたとして、安倍首相の継承発言と矛盾すると、その「真正性」に疑問を投げかけている。

 対して日本の産経新聞は社説で、「歴史問題で理屈に合わない譲歩はすべきでない。その原則を守りながら、日本は韓国側への働きかけを粘り強く続けるしかない」と論じている。

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Text by NewSphere 編集部