“手ぶら”の日本、関係改善への言動はポーズ? 韓国メディアが疑問

 外務省の斎木昭隆事務次官は12日午後、韓国の趙太庸(チョ・テヨン)次官と会談した。斎木次官は当初、1泊2日の予定で訪韓したが、予定された夕食会も取り消し、わずか9時間の訪韓の後、同日午後8時に日本に帰国した。

【韓国の報道】
 韓国で最大の発行部数を持つ朝鮮日報は、この事態を「安倍晋三首相の相次ぐ右傾化の動きで行き詰まっている韓日関係を端的に示している」と評する。

 韓国大手紙の中央日報は、「手ぶらで首脳会談をねだった日本」と題した記事を掲載。斎木氏が特別なメッセージを持ってこなかったとして、日本が本気で関係改善を望んでいるのか、真意をはかりかねている。米国などが日本の歴史認識を批判しているため、首脳会談の“雰囲気づくり”をしているのでは、という憶測も掲載した。

【3国首脳会談の可能性は】
 日本では、24・25日にオランダ・ハーグで開かれる核安全保障サミットの際、日米韓3か国の首脳による会談が開かれるかもしれないという話が出ていた。ロイターによれば、アメリカ政府の東アジア外交のトップが、上院の公聴会で4日、日本と韓国に対し、早急に緊張関係の緩和を求めたというのだ。

 しかし、韓国政府筋によると、今回、斎木次官が3か国首脳会談について打診したものの、具体的議論はなかったとロイターは報じる。自国の歴史的悪行を認めることのできないトップとはあくまで会談を拒否するというのが朴大統領の考えである、と韓国国際放送交流財団のニュースサイト『アリラン』は伝えている。

【日本の主張】
 朝鮮日報によると、今回、斎木次官は、韓国側からの歴史問題を解決せよとの要求に対し「日韓両国は基本的価値を共有している。安倍内閣は歴代内閣の歴史認識を継承する」という原則的な見解を明らかにしたという。

 しかし、菅官房長官は12日の記者会見で「(慰安婦の)強制連行はなかった」との見方をあらためて述べたと朝鮮日報は報じる。菅長官は「(慰安婦の)強制連行がなかったことは第1次安倍内閣の国会答弁で明らかになっている。強制連行に(日本政府や日本軍は)関与していなかった。(根拠となる資料は)発見されていない」と発言した。日本は韓国に対して「歴代内閣の歴史認識を継承する」としながら、自国内では河野談話が認め、謝罪した内容の中核である「慰安婦動員の強制性」を今も否定していると朝鮮日報は述べる。

【韓国の主張】
 朝鮮日報によれば、韓国政府は日本の間違った歴史認識が変わらない状況では首脳会談に向けての話し合いも不可能だと考えているという。趙次官は斎木次官に「日韓関係が安定的に発展するためには日本の指導者たちが歴史修正主義的な言動を自制し、慰安婦問題の早急な解決などに誠意をもって臨み、両国間の信頼を回復することが何よりも重要だ」と語ったという。

【北朝鮮よりも日本の方が脅威】
 なお韓国の民間シンクタンクである峨山政策研究院が最近実施した調査によると、日本を脅威だと感じている韓国人は65%で、北朝鮮の60%を上回っているという。

 斎木次官の訪韓前には、関係改善への期待を示す報道もあったが、一連の報道を見る限り、両国の溝の深さを再認識する結果となったといえる。

「慰安婦」バッシングを越えて: 「河野談話」と日本の責任 [amazon]

Text by NewSphere 編集部