TPP、合意せず閉幕 日米の“溝”が原因で、全参加国の交渉が停滞との指摘も

 シンガポールで開かれていた環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合が25日、合意することなく閉幕した。「交渉は前進した」という楽観的な共同声明とは裏腹に、海外メディアの見方は「日米の溝が埋まらない限り、先行きは暗い」などと悲観的だ。

【日米のせいで交渉全体が停滞?】
 参加12ヶ国の閣僚は、今回の交渉について、「合意に向けて非常に大きく前進した」とする共同声明を発表。同時に、「いくつかの課題は残った」とした。

 アメリカのフローマン通商代表は、「とても良い会合だった。素晴らしい進展があった」と記者団に笑顔を見せた。日本の甘利明担当大臣も、「(交渉が)決裂したわけでも、道が逸れたわけでもない。次のラウンドに向け、良い方向に前進した」と語ったという。

 しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、日本が聖域化して守ろうとする米、牛肉、乳製品など5品目の農産物や、自動車の輸入にかかる関税・非関税障壁を巡る日米の“溝”を強調。昨年末に終了する予定だった交渉がいまだ合意に達していないのは、日米二大国に原因があると論じた。

 フィナンシャル・タイムズ紙(FT)はさらに、日米間の溝がいつまでも埋まらないがために、他の全ての国の交渉も止まってしまったと指摘する。シンガポールの貿易交渉の専門家は、「(日米間に横たわる)政治的にデリケートな問題がハイレベルで合意に達しない限り、TPP交渉全体が宙ぶらりんになってしまうだろう」と、同紙にコメントしている。

【米国内でもTPP反対勢力が拡大】
 WSJをはじめとする米メディアは、最近の米議会の態度も、交渉成立の障害になるとみている。同紙などによると、オバマ大統領の味方であるはずの民主党議員を中心に、TPP参加への反対意見が拡大しているという。

『Market News International』(MNI)は、日本でも反対意見が根強いことを伝えたうえで、「米議会は今年、ホワイトハウスにTPP交渉を早める権限を与えることに反対した。これが合意に向けた新たな障壁になりそうだ」と論じている。

【日米の交渉はオバマ訪日まで持ち越しか】
 それでも、フローマン米通商代表は、農産物と自動車について、今回の日米間の交渉の成果を強調した。農産物では「溝はあるが、それを埋める“例外”を明確に示したところだ」と、その効果に期待する。自動車については「日本市場の非関税障壁撤廃に向け、いくらか進展があった」と記者団に語った。

 もっとも、これらのコメントに対し、MNIは「フローマン通商代表は、実際には失望したはずだ」という貿易アナリストの見方を伝えている。

 閣僚会合は次の日程を決めないまま閉幕した。FTによると、次の交渉進展の機会は、オバマ大統領が日本を訪れる4月後半だという見方が強い。

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Text by NewSphere 編集部