TPP、今年一杯でもまだ間に合わない? 日米のギャップを海外紙は指摘

 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉は22日から閣僚レベル会談が始まり、日本からは甘利経財相が出席している。

 アメリカは昨年末までに交渉をまとめる意図であったが、間に合わなかった。秘密会談であるTPPについて、各国閣僚らは進展を強調しているが、AFPによると一部の閣僚は、今年末までかかってもまだ完了しない可能性を示唆しているという。

【日米の真っ向対立】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、日米の対立に焦点を当てている。アメリカが関税・障壁の完全撤廃を要求しているのに対し、日本は米、牛肉、豚肉、乳製品、小麦、砂糖などの農産物を保護しようとしている。またアメリカは日本での自動車販売についても、非関税障壁の撤廃を要求しているが、自らが日本車に課している関税をカットすることには慎重であるという。

 甘利経財相は「交渉のハードルは非常に高くなっています。日米間にはかなりのギャップが残っています」と述べている。また同紙は、安倍首相の靖国参拝や、それに関連して首相側近(衛藤首相補佐官のことと思われる)がアメリカ批判発言をしたことで日米関係が緊張する中、TPP交渉が新たな争点になってきているとも報じた。

 またAFPは、それ以外にも国有企業の役割制限などで各国が対立していることや、TPPの知的財産権条項が問題視されていることにも触れている。例えば、自由貿易協定にも関わらず特許保護が強化されることで、「国境なき医師団」は安いジェネリック医薬品が出回らなくなると危惧している。

【自党内からも警戒されるオバマ大統領】
 AFPによると、オーストラリアのロブ貿易相は「我々は大きく前進しつつあります」と述べ、「間違いなく」年末までに締結可能だと請け合った。一方でマレーシアのモハメド貿易相は期限について語らず、同国貿易省は協定の29章のうち、まとまったのはあまり問題のなかった8章だけだと証言しているという。

 ビジネス・タイムズは、メキシコのグアハルド経済相の発言を中心に報じた。全体に曖昧で婉曲な表現が多いが、グアハルド経済相は、ほとんどの問題は「着地点」が特定できていると述べた。日米の衝突については、あらゆる交渉当事者にはそれぞれ敏感な箇所があるとして、理解を示した。また、「1週間や1ヶ月余計にかかるとしても、我々は常に、できる限り最善の合意を得ようとしています」と述べている。

 全体として、進展を強調しようとする閣僚らに対し、実際のところは少々怪しい、という印象を受ける。また各紙、オバマ米大統領が米議会からファーストトラック権限(無修正一括承認。議会は修正案を出せず、交渉結果全体を承認するか否決するしかできなくなる)を認められるかどうかが今後の進展に大きく影響すると報じている。が、元々交渉過程の不透明さが批判されているTPPだけに、民主党からさえ、それを認めることには懸念の声が強いという。

米国の研究者が書いたTPPがよくわかる本

Text by NewSphere 編集部