身内の勇み足に安倍首相も困惑? 日本のナショナリズムを米国紙が懸念

 日本国内で、アメリカを批判する発言が相次いでいることに、米国各紙が懸念を表している。

 衛藤晟一首相補佐官(参議院議員)は、安倍首相の靖国参拝に失望を表明したアメリカに対し、逆に「失望」だと語った動画を投稿した。

 また、内閣官房参与の本田悦朗氏は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙のインタビューで「アメリカのパトロン状態から脱出し、中国に対抗し得る自立した軍事力を作るべきと」という趣旨の発言をしたと伝えられている。

 衛藤氏は発言を撤回し、動画は削除された。本田氏は「発言の意図がねじ曲げられた記事」と反論している。それでもなお米各紙は、このような事態が相次ぐ状況を「日米関係の危機」と見ているようだ。

【日本の米国に対する不満がたまっている?】
 原因は、日本がアメリカに「軽視されている」と感じているから。ニューヨーク・タイムズ紙は、この一連の動きをこう分析する。

 “尖閣や防空識別圏などをめぐり日中関係は緊張状態にあるのに、なぜもっと明確に味方をしてくれないのか? 普天間だって移設に向けてこんなに努力しているのに、なんだかあまり評価してもらえない”同紙は、このような日本のアメリカに対する不満が、批判風潮につながった、と見る専門家の見解を伝えている。

 こうした不満は、今に始まったことではない。さかのぼること1年以上前から兆候はあった。安倍首相は2012年12月の就任後、すぐにオバマ大統領へ訪問を申し入れた。しかし、結局1ヶ月待たされてしまったのだ。

 最近では、4月にアジア各国を訪問するオバマ大統領の、日本への滞在予定がたった1日であるらしいことに傷ついているもよう、と同紙は伝える。

「日本は孤立を感じている。もうアメリカを離れて自立するべきという意見もある」同紙はこう語る川上高司教授(拓殖大学)の言葉を載せ、日本の現状をこのように伝えた。

【されどまだ安泰?な日米関係】
 しかしそれでも、日米関係はまだまだ結束が固く、修正は容易というのがニューヨーク・タイムズ紙の見解である。19日に安倍首相と対談した共和党のジム・センセンブレナー下院議員は「親友同士の間でも残念な発言はたまにある。いずれ解決されるもの」と語ったという。

 一方、同紙は憲法改正については依然警鐘を鳴らす。安倍首相が自身の主張を無理に通そうとした暁には、最高裁が「個人の見解で勝手に憲法を書き換えるなどどんなリーダーにも許されない」と明確に知らしめるべきだ、と述べている。

【安倍首相にとって一番困ることとは?】
 ロイターは、一連の批判や発言がもたらす問題を別の角度から分析している。同メディアは、この風潮が安倍首相最大の目標である「アベノミクス」の妨げとなることが首相にとって一番の悩み、と見ているようだ。

 安倍首相の就任以来、投資家達は経済回復政策に期待してきた。しかし最近はもっぱら軍拡傾向のほうが心配になってきている。衛藤氏や本田氏のような意見もあることは周知の事実だが、公の場で発言されてしまうと、「経済回復」よりそちらのほうが注目を浴びてしまう。勇み足とも言えるこうした発言は、安倍首相にとって“何よりも頭の痛い問題”、というのが同メディアの見解である。

日米同盟vs.中国・北朝鮮 (リチャード・L・アーミテージ)

Text by NewSphere 編集部