日中緊張の今がチャンス? 集団的自衛権の行使容認せまる

 日本政府の有識者懇談会は4日、集団的自衛権について憲法の新解釈を行い、その行使ができるよう法整備を進めるべきという認識を示した。早ければ4月にも、集団的自衛権の行使を容認する報告書を、安倍晋三首相に提出する見通しだ。

 安倍首相は4日、集団的自衛権に関して、「どの国も持っているこの権利を我が国も行使することができるかどうか」が重要だとの見解を示した。

【安倍首相にとっては今がチャンス?】
 首相は、平和憲法が禁じていると解釈されている他国への軍事協力を可能にするため、自衛隊の活動範囲を広げる必要があると考えている、とブルームバーグが報じている。首相はこれまで防衛費を2年連続して増加。国家安全保障会議(日本版NSC)を閣内に設置した。多くの反対意見があった特定秘密保護法案も成立させた。

 同紙は、尖閣諸島を巡り高まる中国からの圧力が、安倍首相の軍事力強化の計画に理由を与えている、との見方を伝えている。専門家は、「安倍首相は、支持を得るには今しかないと決心したのだろう」と語っている。地域の緊張が緩やかな状況では、「人々は(軍事力強化を)必要と考えないからだ」という。

 また首相は、現在までに政権が得た国民からの支持を防衛問題に利用しようとしているという。安倍政権の支持率は55%を超える。2016年までは国政選挙も予定されていない。この環境は安倍首相にとって、集団的自衛権を認める枠組みづくりの助けとなる、と同紙はみている。

 なお共同通信社が1月25、26日に行った世論調査では、集団的自衛権行使に対して54%が反対していた(賛成は37%)。

【米韓の反応】
 キャロライン・ケネディ駐日米大使は1月23日、朝日新聞に、「アメリカの兵士や軍艦が攻撃を受けたとき、日本が彼らを守ることができるようになれば、日本はアメリカにとって、より有効な同盟国となるでしょう」と、述べていた。

 韓国国防省副大臣は昨年11月6日、「日本は今、防衛的自衛権を求めるよりも、韓国、中国、その他東南アジア諸国と相互信頼の関係を築くべきだ」と述べていたことを、ブルームバーグは伝えている。

【集団的自衛権は民主主義国家の責務か】
 アジア各国では経済と軍備が発展しているが、ヨーロッパで中心をなすフランスとドイツの結びつきのような核となる存在が未だにない、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は論じている。同紙は、日本を中心とした民主主義国家の連合が実現すれば、中国により効果的に対抗できるのではないか、と推測している。

 また、日本がアジア地域で主導的役割を果たし、国際社会で認められる一人前の国家に変わろうとする安倍首相の努力は評価に値する、と好意的だ。

 一方ディプロマットは、首相が靖国参拝をした同時期に、中国の習近平首相が毛沢東主席記念堂を訪れたことを取り上げ、両国は、自国の歴史に対する適切な理解と反省を欠いている、と厳しい見方をしている。そして、このような国家の不確実な理想と自己認識は、東アジアの不安定さの根本的な要因だ、と分析している。

沈黙の艦隊 全32巻完結

Text by NewSphere 編集部