日中の米国債保有残高、1兆ドル超と記録的に 緩和縮小後の救世主となるか?

 今やGDP世界2位と3位の中国と日本は、米国債購入におけるお得意様だ。米財務省の発表によれば、日中の米国債保有残高はいずれも2013年11月に過去最高を記録した。両国の資金ががっちり米国債へ投入される理由を、海外紙が報じている。

【海外勢に買われる米国債。でもアメリカの経済にはプラス】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、米財務省の国際資本動向統計で、中国の米国債保有残高が11月に前月比で122億ドル増え、1兆3167億ドルになったと報じた。アナリストによれば、最高だった2011年の1兆3149億ドルを上回ったという。
一方、日本の保有残高は120億ドル増の1兆1864億ドルとなった。

 米国債市場最大の投資家は、実はFRB(米連邦準備制度理事会)だ。現在2兆ドル以上の米国債を保有しているが、量的緩和縮小の決定で、買い入れを減らすことになった。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、安定した海外投資家からの需要は、今後米国の消費者や企業の借入コストを抑え、債券利回りの上昇ペースを抑制するのに役立つというアナリストの見解を紹介している。

【日中が手放せない米国債の魅力とは?】
 マーケット・ウォッチによると、日中が保有残高を増やすなか、他の海外勢は概して売りに出ていた。「11月には債券はよく売られた。9月の『量的緩和縮小見送り』を受けての市場の回復後、投資家は利益を確定させたのだろう」とTDセキュリティーズのUSストラテジスト、ジェナディ・ゴールドバーグ氏は述べている。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、中国の米国債買い入れに関し、アナリストたちの分析を載せている。中国には米国との貿易黒字で貯まった巨額の外貨準備があるが、それを預けておくための選択肢は限られているという。中国の外貨準備高は12月末で3兆8200億ドルにもなり、主にドル建てである。

 「中国がアメリカとの間に貿易黒字を持つ限り、ドル建ての準備金をどこかに置いておかねばならない。そして、米債券市場は世界で最も流動性の高い市場である」とニューヨークの野村セキュリティーズ・インターナショナルのUSレート・ストラテジスト、ジェフリー・ヤング氏はいう。「中国は、月々の保有残高に関しては引き続き小さな変更を加えて来るだろうが、米国債を手放すことはない。米国だけでなく、自国も傷を負うことは知っているはずだから」

 アナリストたちは、日本が米国債を買う理由は、その利回りの高さにあるという。米国債の利回りは日本の国債の4倍以上であり、日銀が景気回復の後押しのために札を刷りまくったことで引き起こされた円安も、米国債の魅力に加味されたということだ。

【海外勢が緩和縮小後の穴を埋められるか?】
 もっとも、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、海外投資家がFRBの国債購入縮小の穴を埋めてくれるという結論を出すのは早すぎるという声もある。ニューヨークのバンク・オブ・アメリカ・メリル・リンチのストラテジスト、シャイアム・ラジャン氏は、12月18日のFRBの緩和縮小決定を受け、外国中銀が米国債の保有をカットしたことを指摘している。FRBのデータによると、12月18日から1月8日にかけ、3週連続で外国中銀の米国債保有高は減少している。

Text by NewSphere 編集部