TPP見送りは“強圧的な”アメリカのせい? 海外報道と日本の違いとは

 10日、今年最後の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉が閉会した。目標とした年内妥結は見送られ、すべての分野で「合意」に至らなかった。次回会合は来年1月末に予定されている。

【TPP交渉、合意に至らなかったのは日米が主因?】
 合意に至らなかった理由として、日米間の“ギャップ”が挙げられている。フィナンシャル・タイムズ紙は、日本政府が米、牛肉、農産物などの「聖域」保護を依然として継続していることが障害になっている、と報じている。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙も、フロマン米通商代表部(USTP)代表による、「日本によって進展がうまくいかなかった」というコメントを取り上げており、「例外の無い関税撤廃」という目標に対し、日本の取り組みが不十分との論調だ。

 ただし、内部告発サイト「ウィキリークス」が公表した漏えい文書によれば、アメリカはTPP交渉参加国に対して、要求に従うよう“強烈な圧力”をかけていることが明らかになった。フォーブス誌によると、文書には、知的財産分野だけで19の未解決問題が生じており、仮に日本が大筋合意しても、年内の妥結に至らなかった可能性が高い。

 一方、日本の西村康稔内閣府副大臣は、アメリカ側に柔軟さを求めた。産経新聞や東京新聞などは、結論先送りの最大の要因は、「米国の強硬姿勢」だと断じている。

【その他の国にも懸念点】
 オーストラリアは、アメリカが提案している「著作権保護」「並行輸入」「著作権侵害の非親告罪化」に関して、断固として反対し、譲らない姿勢を示した。ネットユーザーによる著作権侵害を対象とした、インターネット接続業者(ISP)の責任制限に関することも、日本と同様に反対している、とフォーブス誌は報じている。

 ベトナムも同様に、自国産繊維製品・靴について、米市場へのアクセス改善を求めて合意を渋っているという。またニュージーランドは、交渉参加国すべてに酪農製品の輸出を求めている、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。

【アメリカも強い圧力を受けている!? 】
 アメリカの強硬姿勢の背景には、オバマ政権に対する米議会からの圧力がある。共和党の「ティーパーティー」らをはじめ、自動車など産業界から支持を受けている議員から、主に日本の市場開放が不十分との声が強くあがっているという。

 一方で、オバマ大統領は来年の中間選挙までにTPP交渉を妥結させ、成果を国民にアピールするねらいがあるとみられる。

 総じて、TPP交渉参加国だけでなく、米国内でも板挟みにあい、オバマ政権は厳しい状況に立たされているといえそうだ。

Text by NewSphere 編集部