「まるで歌舞伎」? 最高裁の選挙違憲判決に海外紙は疑問

 最高裁判所大法廷は20日、2012年12月の衆議院選挙は「違憲状態」だったとの判決を下した。1票の価値に最大で2.43倍の格差があったためだ。ただし原告が求めていた選挙結果無効の訴えは退けた。

 最高裁は今年3月にも、最大格差が2.30倍だった2009年の衆議院選挙を「違憲状態」との判決を下している。ただし、選挙結果を無効とはしなかった。「構造的な問題が最終的に解決されていない」として、国会に制度や区割りの是正を求めた。

 原告の弁護士たちは、長年繰り返されてきた選挙区の矛盾は残されたままだとして、「今回の判決は、我々の問題提起に答えてはいない」と最高裁の判断の甘さを非難した。

 安倍首相は判決に対し、「厳粛に受け止めている。これから判決内容を精査していきたい」と答えた。

【海外紙は、形式に過ぎない忠告だと批判的】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、最高裁は決して、ひとり1票という憲法の原則に反するとして選挙結果を無効としたことはない、と報じている。「違憲状態にある」という表現も、深刻な違憲問題に対処する際、裁判所が便宜的に使用するいろいろな文言のひとつに過ぎないという。例えば、より語調を強めた「違憲だが(選挙は)有効」、さらに無効を認める「違憲で無効」 などがある。

 さらに同紙は、最高裁が最近の国会の格差是正の取り組みを認め、いくつかの選挙区では「違憲状態だが、選挙結果は違憲ではない」と判断したことに懸念を表している。このような言い回しは、政治家が形式的に忠告を受ける儀式のようなもので、「まるで裁判所が大見得を切る歌舞伎をみているようだ」と同紙は判決の重さを疑問視している。

 ニューヨーク・タイムズ紙も、違憲状態だが改善を政治家に任せるという判決は、20年以上繰り返された判断と変わりはない、と報じている。最高裁は、2012年12月の参院選には間に合わなかったものの、国会は既に同月、選挙区画を改訂するなどの法案を可決し、格差是正のためにさらなる法案を検討していることなどを理由に、裁判所が選挙改革を強制する必要はない、としている。

【アベノミクスのためにも構造改革を進めるべきとの声】
 また日本の選挙制度は、都市部の少ない若者よりも、地方の多くの高齢者がより強い影響力を持つ、と海外紙は報じている。このため政治家は、高齢者の関心が高い福祉の問題に重点を置き、経済成長のための政策に関しては保守的だとも指摘されている。

 ロイターは「選挙改革はアベノミクスの根幹に関わる」とのエコノミストの意見を取り上げている。同氏は、このままでは既得権益が保護されている現状を変えることはできないとして、経済・財政改革も難航すると予想している。

Text by NewSphere 編集部