旅行者26%減、悩めるアメリカ・・・日韓関係改善の見通し立たず

 高まる日韓関係の緊張に、米国政府は頭を悩ましている、とフィナンシャル・タイムズ紙が報じた。同紙は、米国にとって日本と韓国は、東アジアにおける米国の戦略的立場の強化を担う中心国家だとしている。

【日韓関係改善望むアメリカ、強硬姿勢を貫く韓国】
 9月に訪韓したヘーゲル米国防長官は、朴槿恵大統領に対し、日韓関係への米政府の懸念を伝えた。しかし朴大統領は、日本との協力を望むとしつつも、日本の指導層が「時代に逆行する発言」をするせいで、信頼関係が築けないと批判していた。

 また東京で行われた日米外務・防衛閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を2014年末までに見直すと合意。日米同盟の強化を打ち出した。さらに、日本の「集団的自衛権の行使」を米国が認めた。これに対して韓国は、「韓半島の主権行使に関した部分では、韓国の立場を反映してほしいと米国側に要求した」と、中央日報が報じている。

 10日には日米韓合同海上訓練が実施されるなど、関係改善に向けた動きはあるものの、安倍首相と朴大統領の首脳会談が行われる見通しはたっていない。

【関係改善に向けた日本の行動、韓国は受け入れず】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、韓国の李明博前大統領が昨年8月、日韓が領有権を争う島(日本名竹島、韓国名独島)に上陸し、日本の激しい非難を引き起こしたことが、日韓関係が崩れるきっかけだったと報じている。

 その後、安倍首相は昨年12月、大統領就任が決まった朴氏に特使派遣を決めた。2月22日に開催予定だった政府主催の「竹島の日」式典への出席も見送った。日本は関係修復を図る一方、韓国は「歴史認識」を批判し、応じない姿勢だ。

【政治の冷え込みが韓国経済にも影響か 朝日新聞は関係改善を説く】
 日韓関係の冷え込みの影響は政府レベル、民間レベルともに韓国経済に影響を与えている。

 まず、日韓の通貨スワップ枠が縮小された(拡充された枠を延長しなかった)。韓国ウォンが急落するリスクが縮小したためとされるが、政府関係の悪化も影響したといえる。

 さらに、韓国への旅行者数が激減。韓国法務省によると、今年1~9月に訪韓した日本人は約204万人で、前年同期比74%と急減した。円安に加え、関係悪化の影響が大きいと日韓両メディアは報じている。対日輸出や、日本の対韓直接投資も減少しており、韓国経済に影響を与えている。

 こうした状況に対し、朝日新聞は28日の社説で、両国の関係改善を求めた。ぺ・ヨンジュン氏が主演の「冬のソナタ」が大ヒットし、「韓流ブーム」が巻き起こってから10年。日本でKポップが台頭したり、韓国でも日本のアイドルが人気だったりと、両国の文化交流のパイプは広がったと論じた。

 同紙は、その背景には「日韓パートナーシップ宣言」を打ち出した政治の功績もあったと指摘。今では政治のせいで、日本で「嫌韓」感情が広がっていることを憂慮し、「未来志向」(前述の宣言で金大中大統領が言及)の関係改善を両国に求めている。

Text by NewSphere 編集部