海外紙が、日本の「国防強化」を「軍拡」と懸念 その背景は?

 日本は9日、安倍政権下で初となる防衛白書を閣議で了承した。海外各紙は、昨年までの防衛白書に比べ、特に対中国姿勢などが強硬化していると報じている。

【紛争を背景に口調の硬化】
 各紙は、中国への警戒が強化されている点に最も注目している。背景には、昨年9月以来、中国艦船や航空機の尖閣諸島への接近が増えており、1月には中国艦による自衛艦へのレーダー照射事件が起きたことなどがある。
 白書では、「中国は自身の主張に基づき、力によって現状を変えようとしており、これは既存の国際法秩序と相容れない」、「極めて遺憾な、不測の状況を発生させうる危険な行動」などと表現されていることが取り上げられている。
 安倍首相や白書は、過去にも中国の脅威に触れてはいるものの、公式の白書にこれだけ明確な「告発」が載ったことはない、とフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。
 白書は他に、韓国との竹島紛争や、北朝鮮の核問題についても言及している。

 なお中国および韓国の外務省は、「中国の脅威を強調することで一方的に緊張を引き起こす試み」「明らかに我々の領土である独島(竹島)に日本が再び領土主張を含めてきた」などと抗議した。

【米国の軍事費削減を懸念】
 白書は、そうした脅威に対応するにあたり、合同軍事演習など米国との一層の連携強化を訴えている。
 しかし白書は、米国がアジア重視策を唱えながらも、財政危機による軍事費削減に直面していることを懸念し、「厳しい財政状況がこうした政策を現実化する努力にどれほど影響するか」注視されるべきだと述べている。

【軍備強化ねらう安倍政権】
 一方で日本の防衛費は、安倍政権によって11年ぶりに増額された。白書も、各紙いずれも、この点に言及している。
 ニューヨーク・タイムズ紙は、安倍政権が民主党政権による軍備縮小路線の見直しを指示したことを、またフィナンシャル・タイムズ紙は、安倍政権が憲法改正を長期目標としていることを指摘し、政権の軍拡志向を強調した。
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、先制攻撃能力の開発や米海兵隊と類似の上陸作戦能力といった、自衛隊の質的変化への白書提言にも着目した。同紙はさらに、今回の白書に自衛隊員のエッセイが多く掲載されていることも指摘、「明らかに自衛隊部隊の声望を高めることを目的とした努力」であり、際立った特徴であると報じている。

Text by NewSphere 編集部