黒田新総裁、国会提示 海外紙が分析する日銀の今後とは?

 安倍内閣は28日、日銀新総裁に黒田東彦(はるひこ)・アジア開発銀行総裁、副総裁に岩田規久男・学習院大学教授および中曽宏・日銀国際情勢担当理事の各氏を指名した。国会両院での承認採決は3月15日ごろになるとみられる。

 参議院は野党・民主党が優勢であるが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば目立った反対はない見込みだという。またフィナンシャル・タイムズ紙は、財務省は自省出身者である武藤敏郎氏を最も望んでいたが、やはり同省出身者である黒田氏でもよしとするだろうと述べた。武藤氏が提示された5年前は、国会を通過せず、総裁空位の状態が発生したが、今回は現総裁および副総裁が退任する19日には間に合いそうである。

 候補の3氏はいずれも、従来の日銀政策をデフレ克服に消極的と批判しており、安倍政権の「大胆な金融政策、柔軟な財政政策、民間投資を刺激する成長戦略」という「3本の矢」路線に同調しているとされる。各紙は日銀が新体制のもと、国債などの資産購入プログラムの拡大、あるいはその国債の満期延長、日銀当座預金残高の増加など、市場への通貨供給拡大策を採ってゆくとみている。
 また黒田氏は、1999年から2003年まで日本のトップ金融外交官(大蔵省/財務省財務官)を務めており、通貨安競争などでの摩擦が問題になる中、海外への知名度と発信力がある点が買われたという。

 ただしウォール・ストリート・ジャーナル紙は、総裁・副総裁が安倍政権に同調していても、日銀政策委員会は9名の合議であるから、安倍政権の思い通りになる保証はないと釘を刺した。安倍政権は1月、渋る日銀に2%のインフレ目標を呑ませたが、日銀としては2014年度のインフレ予測を0.9%程度とみており、木内登英(きうち・たかひで)委員などは2%目標を達成困難と公言している。

 なお黒田氏については、後任のアジア開発銀行総裁職を日本が確保できるのか懸念されているが、各紙はその点には特に触れていない。

Text by NewSphere 編集部