日米首脳会談は、両国関係をどう強化したのか?
安倍首相は22日、オバマ米大統領との初の首脳会談を行った。尖閣諸島をめぐる日中関係の緊張や、北朝鮮の3度目の核実験実施などを受け、日米の「絆」の確認を最重要事項として臨んだ安倍首相は、首脳会談から何を得たのか。
海外各紙は、両国関係に焦点を当てつつ、TPP、防衛問題、基地問題など、日米の懸案事項を取り上げ、今回の首脳会談を振り返った。
フィナンシャル・タイムズ紙は、安倍氏の戦略を、自身の首相の座への「カムバック」と日本の「再生」を重ね合わせてアピールするものだったと報道。ここ数年の民主党政権による日本の政治が「政策的実行力に欠け、めまぐるしく首相が交代」し、「アメリカとの距離をおき、台頭する中国との関係を重視する方向性」だったと紹介。一方、安倍氏率いる自民党の政権奪取は、「行動主義的で親米的な政権の誕生」と表現した。北アフリカや中東での戦争や対テロ活動に明け暮れたここ数年間を後に、太平洋域にシフトを移そうとしているアメリカに安堵感をもたらしたと報道した。
TPP交渉については、7月の参院選を控え「聖域なき関税撤廃」を了承するわけにはいかない安倍首相の立場から、進展は望めないとする大方の予想を裏切り、「聖域」の存在を確認しつつ、日本が交渉のテーブルにつくことを確約するという結果となった。共同声明では、「すべての物品が交渉の対象にされる」ことを明記しつつ「両国ともに、2国間貿易上のセンシティビティーが存在することを認識」し、「一方的にすべての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではない」とされた。
山積する日本と周辺国との問題については、北朝鮮について「強い行動」の必要性と、さらなる制裁を求めていく方向性で合意した模様。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、対中関係については、安倍首相が日本側の「冷静な対処」の継続を伝え、「日米同盟の存在が地域の平和と安定にとって重要」との認識で一致したという。
日本の防衛力強化については、安倍氏から予算の増額や自衛隊の人員強化などの方針を伝えた上で、自衛隊の活動範囲を制限する国内法緩和の意向も示したという。これは防衛費の削減を進めたいオバマ政権にとっては歓迎すべき内容だと報じられている。
こうした内容に手応えを感じたのか、会談中、安倍首相はオバマ大統領に、「日米同盟の信頼、強い絆は完全に復活したと自信を持って宣言したい」と述べたという。
しかし、アメリカが手放しで今回の成果を評価しているかといえば、そうともいえないようだ。たとえば、TPPについては、ニューヨーク・タイムズ紙が、「TPP交渉に入るということは、従来の日本のやり方を抜本的に見直すという明確な覚悟と認識が必要だ」との下院議員の警告の声を伝えたほか、防衛費の増強についても、アメリカは日本の右傾化を警戒する韓国などの同盟国に配慮せざるを得ないという。また、二国間の関係強化のために安倍政権の長期化を求める一方で、タカ派で鳴らす同氏が7月の参院選で勝利をおさめたとき、現在の穏健な態度を脱ぎ捨てるのではないかという懸念も残る模様だ。さらに、未解決のまま長引く基地問題についても、進展はみられなったという。
総じて、一定の評価をしつつ、今後に課題が持ち越されたことを強く示唆する報道となった。