日銀総裁に黒田氏起用か その背景と影響とは

 政府は次期日銀総裁に黒田東彦・アジア開発銀行(ADB)総裁を起用する方針だ。白川現日銀総裁は3月19日に退任する意向を示しており、衆参両院の同意が得られれば、20日から新体制が発足することになる。黒田氏は、1999年から2003年まで財務省で通貨政策を担当しており、当時からインフレターゲットの導入を日銀に求めていた。
 海外各紙は、黒田氏の経歴と今後の展開について詳しく論じている。

【早くも黒田効果か?】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、黒田氏起用という情報の効果について報じている。黒田氏が日銀総裁に指名されるとの報道がなされてからさらに円安に進んだという。月曜早朝の取引では2010年5月以来の高値である1ドル=94.77円をつけている。

【黒田氏起用の理由】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、安倍首相の求める日銀総裁の各種要件を黒田氏がまんべんなく満たしていると報じている。その中でも特に流暢な英語を話すことが起用理由の一つとなっているとしている。同紙によると、安倍氏の円安政策によってすでに貿易相手国との軋轢が生じており、政策を説明する「大使」としての役割を任せられたのだという。

 一方ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、黒田氏が安倍首相と同様の考え方をもっている点に言及している。具体的には、日銀がデフレに対処するためにはあまりにも臆病であるという安倍氏の考え方を引き合いに出し、以前から日銀のあり方にあからさまに批判してきた黒田氏と比較している。さらに同紙は、まだ打てる金融緩和策が多数あり、国債のみならず社債や株式も買い入れの対象とできると黒田氏が述べたことを紹介している。これについてはビジネスウィーク誌も、黒田氏が買い入れの対象を拡大するであろうというストラテジストの予測を紹介している。また同誌は、2002年11月の時点で黒田氏が1ドル120円というレートが円高に過ぎると発言していたことを取り上げている。

【参議院の承認は?】
 日銀総裁人事は両院で承認を得る必要があるが、参議院において与党は過半数割れしている。実際過去に民主党によって日銀総裁候補が拒否されたことがある。しかしフィナンシャル・タイムズ紙は、今回はそのようなことにはならないと見ている。理由は、民主党が政権与党にあった時分に日銀に対して一層の金融緩和を求めていたからだという。ただし同紙は、黒田氏が財務省官僚出身という経歴であることから日銀の独立性が損なわれるとして、みんなの党が反対を表明したことについても報じている。

【3つの不安】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、黒田氏起用に関する不安材料を3点挙げている。具体的には、(1)総裁および2名の副総裁が安倍首相によって指名されたとしても、日本銀行政策委員会は他に6名おり、これまで白川総裁の意向に沿って運営されてきたこと、(2)無制限な国債買い入れによってハイパーインフレが起きる懸念があること、(3)「日本に起きている問題の大半は金融政策で解決できない」という意見(アニール・カシャップ・シカゴ大学教授)があること。

Text by NewSphere 編集部