ロシア、日本の領空侵犯 その意図とは?

 外務省は7日、ロシアの戦闘機(Su27S)2機が北海道の利尻島南西沖の日本領空を1分余り侵犯し、日本はF2戦闘機を緊急発進させたと発表した。日本政府はロシア大使館に対し「厳重抗議」を行い、ロシア政府による事実関係の調査を申し入れたという。ロシア軍機による領空侵犯は5年ぶりとされる。
 
 日本の非難に対し、ロシア国防省のスポークスマンは「軍の戦闘機は国際的なルールに厳格に則って航空しており、他国の領空を侵犯することはない」と否定したという。

 日本では、7日は「北方領土の日」とされており、安倍首相も東京で式典に列席していた。「4島返還の交渉のために手立てを尽くす」と決意表明した矢先の出来事だった。加えて、中国の軍艦艇による、海上自衛隊の護衛艦への射撃管制用レーダー照射問題の対応に日本政府が追われている最中でもあった。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、この点につき、自衛隊の統合幕僚長、岩崎茂氏が先月、日本が中国への警戒を強めなければならないのはもちろんだが、北方領域での実効支配力を徐々に強めようとしているロシアの存在を忘れてはならないと警告していたことを紹介した。
 
 とはいえ複数の防衛アナリストは、今回のロシアの動きに重大な意図はないと見ているという。尖閣諸島に早期警戒管制機(AWACS)を集結させているとの情報を得たロシアが、日本を「試した」と見るべきだと分析している模様だ。

 さらに、ロシアが試しているのは、軍備だけではなく、領土問題への積極的な取り組みと軍備強化を掲げる安倍首相の決意だという専門家の分析もある。困難な問題が眼前に突きつけられたときの安倍氏の反応を試しているというのだ。「中露両国には、早いうちに、安倍氏の性急な行動を押さえ込む狙いがある。「強く出ない」前例を作れば、今後の動きが取りづらくなると分析している」とした。

 一方モスクワ・タイムズは、北方領土について「もともと、住んでいたのは日本人でもロシア人でもなく、土着のアイヌ人だった」と言及。ロシアが獲得したのは1945年の終戦後だったとした上で、紆余曲折を経ながら双方が領有権を譲らないまま現在の状況を迎えたと紹介した。

 ロシアの専門家は、「状況を打開する唯一の方法は、島々の共同利用だ。文化交流を加速させることで、日本の感傷論をなだめることができる」と述べているという。そのほか、ロシアの識者によると、歴史を踏まえると、ロシアに領土面での譲歩は考えられないとの見解も紹介された。

Text by NewSphere 編集部