海外紙が安倍政権の経済政策に呈した苦言とは?

海外紙が安倍政権の経済政策に呈した苦言とは? 26日に安倍新内閣が発足し、麻生太郎元首相が副総理および財務・金融相、甘利明氏が経済再生相、岸田文雄氏が外相、菅義偉氏が官房長官、などとの陣容になった。また小渕優子氏と山口俊一が副財務相、西村康稔氏が経済問題担当の内閣府副大臣となる。安倍新首相は「成長を諦めた国に未来はありません」とし、経済再建への意欲を語っている。
 これを受けて海外各紙は、新政権の経済政策について論じた。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、90年代のような、自民党らしい大規模公共事業による経済政策に復古するという観測を報じた。新政権は、前政権の決めた44兆円の国債上限を無視し、おそらく2012年予算からの余剰資金4~5兆円と新規国債発行5兆円程度を合わせて、10兆円規模の補正予算を組むとも予想している。同紙は、自民党の票田を重視した投資先の決め方や、「どこにも繋がらない橋の建設のようなムダなプロジェクト」など、投資効率の悪い支出になることを危惧している。一方、たとえば日本の老朽化したエネルギーインフラを能率化することで生産を増やすなど、「ただのケインズ理論ではない」新しいアプローチと期待する見方も紹介した。

 また同紙は、市場の動向について、すでに安倍氏の積極発言により円安・株高に動いているものの、それは国内投資家に限った動きであり、外国人がよく取引する株式や通貨についてみれば動きが鈍いと指摘した。さらに、新政権で見込まれる国債増発が債券市場に悪影響するリスクを指摘し、野放図な支出の習慣は、「政府が財政再建を二の次にしていると明かしてしまう」と警告した。そして、政権の経済復旧への真の試練は、持続的成長を実現するための構造改革の「痛み」に耐えられるかどうかだ、との見方を伝えた。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙も市場の動きに着目し、このところの円安は日本の輸出業者に追い風となり、政権もこのまま円安傾向を維持しようとしていると伝えた。また、1ドル100円程度までは円安のメリットがデメリットを上回るだろうとの専門家の意見も紹介。しかし同紙は、世界各国が同様に自国の通貨を安く抑えようとしている「通貨戦争」の状態であり、円安は各国との摩擦を大いに増大させうると警告している。

 一方ブルームバーグ・ビジネスウィークは、主に麻生氏の来歴に焦点を当てた。麻生氏はセメント業界の大物の息子で、元オリンピック選手、首相時代はバラマキ支出のチャンピオン、失言の前科持ち、などと紹介されている。同サイトは麻生氏のコメントとして、前政権はデフレ脱却に完全に失敗したと断じ、「我々の優先事項は、日本の皆様に経済改善を実感して頂けることの保証にあります」と発言したという。また物価下落が続く中、日銀はインフレに過敏すぎるとも批判、消費税については増税前に経済が改善されるべきことを改めて表明したと報じている。
 しかし同サイトは、日銀が債券を多く買ってインフレ率が急増し始めても、日本国債の利回りの急騰を避けられるという政権の主張について、「そのような挑戦に成功した国を見たことがありません」との専門家の意見を伝えている。

Text by NewSphere 編集部