急増する中国サイバー攻撃 日本紙はどう報じたか?

 18日、米マンディアント社が、中国からのサイバー攻撃に人民解放軍が関与しているという報告書を発表した。中国政府および軍はこれに真っ向から反論し関与を否定した。むしろ中国は、主にアメリカからのサイバー攻撃の被害者であると主張した。 
 これまでも度々サイバー-攻撃については報じられてきたものの、相手国軍の関与を名指しで批判することは異例だ。国際関係の新たな火種となりかねない今回の事件を、日本の各紙はどう報じたのか。

 各紙はまず、マンディアント社の報告書の内容を詳しく報じた。同社は、過去10年にわたる数百の企業・組織のサイバー攻撃例について追跡調査した結果、攻撃の発信元が上海・浦東新区に集中していることが判明した、としている。IPアドレスなどの痕跡から、同区に拠点を置く、人民解放軍所属の 「61398部隊」による攻撃と結論付けたという。攻撃の規模から、豊富な資金と、数百人単位とみられる組織的な関与があったとみられている。産経新聞は、この舞台が、「醜いゴリラ」と呼ばれるグループなど3つのハッカー集団とも連携を深めていたと報じている。
 具体的な被害としては、宇宙開発やエネルギー、テレコミュニケーション分野の企業から、特許品の製造工程、営業計画、提携合意書、電子メールなどが盗まれたと報じられている。なお読売新聞によると、日本での被害も1例報告されているという。

 次に、中国のサイバー攻撃に対するオバマ政権の対応について、各紙は注目している。
 既にオバマ大統領は12日の一般教書演説で、サイバー攻撃によってインフラが破壊される危険性に言及し、対策を強化する大統領令を発していた。インフラ施設や関連企業への攻撃報告が、2011年には前年の5倍に増えたように、サイバー攻撃の脅威の高まりが背景にあるようだ。さらに、朝日新聞によると、世界のサイバー攻撃のうち3分の1は中国が発信元という民間の報告もあり、政府は特に神経をとがらせているという。
 こうした中で発表された今回の報告書には、米国のインフラを破壊する攻撃は含まれていなかった。しかし、読売新聞によると、電力会社や化学製品企業のデータを盗んでいることから、意図しなくてもダメージが生じる可能性はあったと指摘されている。

 朝日新聞によると、オバマ政権の当面の対策は、企業とのサイバー攻撃に関する情報共有、企業による防衛策の自主基準策定など限定的なものにとどまっているという。オバマ大統領は議会に対策の法制化を強く求めていたが、今回の報告書を受け、議会内でどのように議論を進めていくかが注目されているという。

Text by NewSphere 編集部