2500年前のミイラ、報道陣の前で公開 エジプトで木棺59基発見
◆ピラミッドの集中地帯で発見
今回ミイラが発見されたサッカラ高原は、首都・カイロから30キロほど南下した場所に位置する。この地は「ステップ・ピラミッド(階段ピラミッド)」とも呼ばれる、ジェセル王のピラミッドがあることで有名だ。有名なギザのピラミッドと似た四角錐の形状だが、斜面がギザよりも荒い階段状になっている。米CNNはステップ・ピラミッドについて、推測によると世界最古のピラミッドであるとも紹介している。59基の木棺はこのピラミッド付近の埋葬地で発見された。
AP通信によると、サッカラはほかにもピラミッドが集中していることで知られており、その数は11基以上に及ぶ。一帯にはアブシールやダハシュールなどのより小規模なピラミッドが点在しており、メンフィスと周辺の墓地遺跡を一体として、1979年に世界遺産に登録されている。
◆打撃のエジプト観光業を救えるか
2019年10月にはルクソール南部の街で30基の木棺が発見されており、古代遺物の発見が近年相次いでいる。アナニ観光考古相は、今回サッカラ高原で発見された木棺群をルクソール南部のものと併せて展示したい意向を示している。ギザのピラミッドにほど近い場所でグランド・エジプト博物館の建設が進んでおり、そこでの収蔵・展示が検討される模様だ。AP通信はエジプト観光業について、2011年のエジプト革命の争乱で打撃を受けたと報じている。追い討ちをかけるように、コロナウイルスのパンデミックによって海外客の足がさらに遠のいている状況だ。発見された木棺には、回復の起爆剤としての役割が期待される。
観光業はエジプト経済の要であり、2019年には年間1360万人の旅行客が訪れていた。パンデミックの影響を受け、各種遺跡と博物館は2020年3月から閉鎖されてきたが、9月頃から再開しているとCNNは報じている。4月にも木棺が発掘されるなど現地では考古学上の発見が続いており、観光客が再び貴重な発見の現場を訪れるようになれる日が待たれる。