温暖化で溶ける氷、蘇る病原体……パンデミックの危険性は?

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ツィマーマン氏は、永久凍土の中から発掘された、肺炎で死亡したミイラの肺組織から細菌を採取。培養を試みたがまったくなにも育たなかったという。肺炎を起こす細菌は、冷たい土の中ではなく温かい人の体の中で生きるのであり、数百年凍っていた微生物が蘇生することはないと結論している。

ウイルスの場合も同様だ。1951年にジョアン・ハルティンという当時大学院生だった研究者が、アラスカから1918年にスペイン風邪で死亡した人の肺からウイルスを取り出し培養を試みたが、やはりウイルスは死んでおり成功しなかったという。その後1990年代にはロシアで永久凍土に埋まっていた死体から天然痘ウイルスを採取して培養を試みたが、失敗におわったという(NPR)。

SWIによれば、2005年にNASAの科学者たちが、アラスカの氷から採取した3万2000年前の細菌の「蘇生」に、十数年後にはシベリアのツンドラ地帯の氷から採取した3万年前の巨大ウイルスの活性化に成功したということだ。しかしデュークレフ氏は、病原体が蘇生することがあるとしても、研究者が研究室で最大の努力をした場合で、自然の環境では可能性は極小のように思えるとしている(NPR)。

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Text by 山川 真智子