温暖化で溶ける氷、蘇る病原体……パンデミックの危険性は?

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 ロシアの生物学者、ボリス・ケルシェンゴルツ氏によれば、炭疽菌の胞子は永久凍土の中でも2500年は生き延びるという。過去に極北の住民は、貴重な薪を動物の死骸を処理するために使いたがらず、永久凍土を掘って「家畜墓地」として埋めてきた。遊牧民ならそのまま放置して「呪われた土地」として近寄るのを避けたという。現代ではそういった場所へ一般人が入ることはできず、場所自体も秘密にされている。永久凍土が解ければ、そこを流れる水などにより、炭疽菌の胞子が運ばれて犠牲者を出すのではないかと懸念されている(テレグラフ紙)。

◆怖がらせ過ぎ? 自然界での蘇生は困難
 もっとも、こういった恐ろしい「ゾンビ病原体」の話は、少し怪しいのではないかと、米公共ラジオ網NPRの科学デスク、マイクリーン・デュークレフ氏は述べる。炭疽菌の場合は、千年以上にわたって世界中でしばしば土壌から「湧き上がって」おり、低温時に地中に冬眠し、春になると息を吹き返すということは知られてきたため、事情は違うとする。

 北極圏は炭疽菌より危険な病原体でいっぱいだという情報が出ており、永久凍土の中には、数万人の死体が眠っているとされる。その中には天然痘、スペイン風邪などによる犠牲者もいる。こういった危険なウイルスが「穏やかな解凍」に耐え、新たなアウトブレイクを起こすのだろうか。デュークレフ氏は、ペンシルバニア大学の古生物病理学者、マイケル・ツィマーマン氏にこの疑問をぶつけている。

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Text by 山川 真智子

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