温暖化で溶ける氷、蘇る病原体……パンデミックの危険性は?

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 この論文の著者たちは、こういった氷河から古代のウイルスを発見することは、人為的な気候変動の影響で不可能になるかもしれないと述べる。気温上昇で世界中の氷河が減少し、その中に長らく囚われていた細菌やウイルスが放出されるからだという。これは地球の過去の気候システムを解明するという観点では、氷河の中にある役立つデータが減少することにつながる。しかし最悪の場合、人に有害な病原体が大気中に放出されてしまうこともあるとしている(同上)。

◆覚醒した菌 シベリアでアウトブレイク
 氷河以外に危惧されているのが、永久凍土の減少だ。氷や永久凍土の中に囚われている微生物が空気中に放出されて活性化し、思わぬ結果を招く可能性もあるとSWIは指摘している。

 実は2016年にシベリアのヤマル半島で炭疽菌の集団感染が起き、2000頭のトナカイが死に、96人が入院する惨事が起きた。この地方ではトナカイの生肉を食べる習慣があるが、感染した生肉を食べた12歳の少年が死亡している。その年はシベリアに気温35度という熱波が到来。永久凍土が解け、75年前に感染したトナカイの死体の中で生き延びていた炭疽菌の胞子が大気中に放出されたことが、感染の原因だと研究者は結論付けた(SWI、テレグラフ紙)。

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Text by 山川 真智子

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