ローマの英雄・カエサルの名言|あの最期の言葉の意味や功績も解説

ローマの英雄・カエサルの名言|あの最期の言葉の意味や功績も紹介

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カエサルは、古代ローマの政治家・軍人でありヨーロッパの歴史を変えた人物である。「ブルータス、お前もか」という彼の最期の言葉を耳にしたことがある人は多いだろう。実は彼は、有名なこの名言の他にも、一度聞いたら忘れない名言や現代の我々も日常生活で意識すべき戒めの名言を数々残している。本記事では、名言の意味や背景も踏まえながら紹介していく。

ユリウス・カエサルのプロフィール

ユリウス・カエサルのプロフィール

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名前ガイウス・ユリウス・カエサル
ラテン語名Gaius Iulius Caesar
※IuliusはJuliusと書くこともある
出身地イタリア ローマ
生年月日紀元前100年7月13日
死没年日紀元前44年3月15日
職業政治家、軍人、文筆家
人柄寛大、借金王、女好き

ガイウス・ユリウス・カエサル(以下カエサル)は紀元前ローマに生まれた政治家、軍人、文筆家である。「カエサル」はドイツやフランスで「皇帝」を意味する言葉の起源となっている。

ユリウス・カエサルの生涯

ユリウス・カエサルの生涯

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カエサルは、共和制だった古代ローマで事実上初めての国家元首となった人物である。まず、数々の名言を輩出するに至った彼の生涯を追っていこう。

市民の味方として台頭

カエサルはローマの名門貴族の出自である。若い頃に当時権力を握っていた執政官スッラと政治的立場の違いで対立し、ローマから離れて属州のアジア(トルコ付近)などで従軍し武功を挙げた。スッラの死後帰国し、紀元前77年頃から政治に携わるようになる。

カエサルは、当時の民衆の娯楽であった剣闘士競技会を開催したり、積極的に公共事業を行ったり、市民集会で演説したりするなど、市民に寄り添い人心の掌握に努めた。そして、彼らの代表者のような立場で元老院と対峙していく。元老院とは複数人の合議制をもってローマを支配していた組織だが、彼らは自分たちの利権しか考えておらず、カエサルは政治を正さねばならないと考えていたのである。

こうして志を同じくする政治家のポンペイウスや富豪のクラッススと協力し、時には役職を買収しながらもカエサルは徐々に頭角を現していく。

ローマの最高権力者に就任

カエサルは、紀元前58年からガリア(現在のフランス・ベルギー・スイスなど)の地方長官となり、約8年かけてガリアを平定しローマの支配下に置いた。これにより政治的、軍事的をさらに増強させ民衆の支持を得る一方、元老院からは警戒される存在となる。協力者のポンペイウスとも対立するようになった。

紀元前49年カエサルがイタリア半島を手中に収めると、ポンペイウスは逃れた先のエジプトで殺害される。彼を追ってエジプトに上陸したカエサルは、北アフリカの元老院派も討伐し、自身の反対派の一掃に成功した。ちなみに、このとき絶世の美女で有名なクレオパトラと出会って恋愛関係となり子をもうけた。

こうして敵を全て排除したカエサルは、紀元前44年に独裁官というローマの最高権力者となる。彼は民衆のため法律やインフラの整備に力を注いだが、共和制を支持するブルータスらに権力の一点集中を危惧され、紀元前44年3月15日暗殺された。

ユリウス・カエサルの名言とその意味

ユリウス・カエサルの名言とその意味

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ローマのトップに上りつめ、政治の主導権を握った矢先に暗殺されたカエサル。波乱の生涯を送った彼が残した名言の意味や、その背景を解説していく。

有名な名言

「賽は投げられた」

賽とはサイコロのことであり、「一度出た目を取り消すことはできない」「すでに決まったことなのだから腹を括って進むしかない」という意味をもつ。

これは、カエサルがポンペイウス討伐を決意してルビコン川を渡る際の名言である。ルビコン川はローマと他地域の境界にあり、武装して渡ることはローマ元老院への反逆と見なされていた。カエサルの決して後戻りしない強い意志を表す名言だ。

「ブルータス、お前もか」

カエサルが暗殺される際、実行犯の中に信頼し可愛がっていたブルータスという男がいた。予想もしなかった裏切りを嘆いた言葉であり、カエサルの名言としてもっとも広く知られているに違いない。

この言葉はシェイクスピアの劇『ジュリアス・シーザー』で使われたことで有名になった。しかし、実際にカエサルが言ったのは「息子よ、お前もか?」だったともいわれている。

聞いたら忘れない名言

「来た、見た、勝った」

カエサルが西アジアのポントス王を討伐した際、友人に送った戦勝報告の手紙の一文である。カエサルは文筆家としても一流であり、簡潔明瞭な文章を書くことに長けていた。最小限の言葉ながら状況がよくわかる名言だ。

「全ガリアは三つの部分に分かれる」

カエサルがガリア平定の報告書として執筆した『ガリア戦記』第1章の書き出しの一文である。名言といえるのかは評価が分かれるものの、作家の塩野七生氏は読み物として読者を一瞬で引き込む名文であると評価している。

「わたしは王ではない。カエサルである」

この言葉には、これまでの王と一線を画す、民衆に人気のある政治家カエサルならではの特色がある。

当時の民衆にも、王はヒエラルキーの頂点であり、一般庶民を支配して搾取するイメージがあったのではないだろうか。しかし、カエサルは皆が想像する「王」ではなく、ローマや属州(ローマ支配下の地域)の民の安寧のため尽くす1人の人間だという主張が込められているのである。

教訓にしたい名言

「人は喜んで自己の望むものを信じるものだ」

ガリア平定の際にローマと敵対していた勢力は、予想外の長期戦を強いられ食糧不足でイライラしていた。そんなとき、ローマのスパイが「ローマ軍は怖じ気づいている。今攻めたら勝てる」と嘘の情報を流した。そのためチャンスだと意気込み討伐に向かったものの、陣地に到着するまでの山登りで皆疲弊して、ローマ軍に返り討ちにされてしまったのである。

自分に都合のいい現実しか見ようとしないのではいけない。うまい話にはすぐ飛びつかず、一度冷静になるべきだという教訓である。

「始めたときは、それがどれほど善意から発したことであったとしても、時が経てば、そうではなくなる」

よかれと思って始めたことも、時が経つと悪しき慣例となる可能性がある。

ローマである陰謀事件が起こった際、元老院たちは容疑者の処刑を主張したのに対し、カエサルは証拠もなく罰するべきではないと語った。まさに「疑わしきは罰せず」の精神である。ここで疑わしきを罰する先例を作ってしまうと、後の世もそうなりかねないと警鐘を鳴らしたのだ。

自分を奮い立たせる名言

「ローマで二番になるより、村で一番になりたいものだ」

「大きな舞台で二番になっても人の記憶に残らない。それよりはどんなに小さな舞台でもそこで一番になった方がいい」という意味である。

小さな舞台でも一番になり続けていれば、誰もがいつかはカエサルのように規模が大きな舞台で頂点に立てるかもしれない。まさに「千里の道も一歩から」を思わせる名言である。

「世の中には苦痛を辛抱強く耐え抜く者より、進んでわれとわが身を殺す人のほうが見つかりやすい」

意訳すると「わずかな期間で焦って身を滅ぼすのではなく、まず辛抱強く耐え忍ぼう」となる。厳密にはカエサルの名言ではなく、カエサルが誰かの言葉を伝え聞いて書き記したものだ。

ローマと敵対していたガリア軍がカエサルに包囲され、降伏すべきか城から討って出るべきか悩んでいたとき、ある貴族が今は援軍を待つべきだと主張した。すると、本当にガリア軍にローマ軍の何倍もの援軍が到着したのだ。

何事もすぐに投げやりになるのではなく、まずは我慢する。時と場合によるが、少しの辛抱もできないようでは身を滅ぼしかねないという戒めの名言だ。

ユリウス・カエサルの功績

ユリウス・カエサルの功績

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数々の名言を残した古代ローマの指導者カエサルの功績とは、結局何だったのか。ここではカエサルの功績について解説する。

ローマ帝国の成立

カエサルの功績としてもっとも大きいのは、ローマ帝国というヨーロッパで最初の大国を成立させた点である。カエサルが登場するまでのローマは、もともといち都市国家にすぎなかった。

それが、カエサルの優れた軍事力、人心掌握術、政治的地位によって、フランスからトルコ、北アフリカといった広範囲の地域を支配するヨーロッパで最初の大国となったのである。ローマの進んだ文明や技術が他の地域に伝播することにもつながった。

実際に皇帝という称号が誕生し帝国となるのは、カエサルの後継者オクタウィアヌスからである。しかし、最初にカエサルが帝政への道を切り開いたことでヨーロッパの運命を変えたといわれている。

ローマ帝国は395年に東西に分裂するものの、後世にもその影響は根強く残った。名門ハプスブルク家が代々当主を務めた神聖ローマ帝国も、古代ローマの威光にあやかった名称である。

歴史の証言者

歴史の証言者

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カエサルは雄弁家、文筆家としても第一級の人物として高く評価されている。その理由のひとつが、彼がガリア戦争中に執筆した『ガリア戦記』である。

さきほど紹介した「全ガリアは三つの部分に分かれる」で始まるこの書籍は、ガリア戦争の遠征記録かつ戦況報告書である。ガリア人の風俗などについても記されており、当時のヨーロッパ事情を知るための貴重な資料だ。紹介した名言も取り上げられているので、ぜひ読んでみてほしい。

現代人にも刺さるカエサルの名言を取り入れて行動してみよう

カエサルは紀元前という想像もできないほど遠い昔の人物だが、現代を生きる我々の心にも刺さる名言をたくさん残している。ぜひ彼の著作物などからも、困難を乗り越えるヒントを探してみてほしい。

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Text by NewSphere 編集部