SNSの健康情報、68%が「誤解を招く」 TikTok・インスタの300動画を分析

SNSで健康的な食生活について発信する女性(イメージ)|Fit Ztudio / Shutterstock.com

 TikTok(ティックトック)やインスタグラムで目にする「健康的な食事」の情報は、どこまで信用できるのか。健康や栄養に関する動画300本を分析した研究で、投稿に含まれる情報の68%が「誤解を招く、または欺瞞的」と判定された。投稿者の約8割は、健康や栄養などの専門資格を持たない人だった。

 研究はオーストラリアのフリンダース大学の研究チームが行い、学術誌『Journal of Technology in Behavioral Science』に発表した。

◆健康・栄養情報の68%「誤解を招く」
 研究チームは、ティックトックとインスタグラムで「#healthylifestyle」「#nutrition」「#cleaneating」の3つのハッシュタグを検索し、それぞれ上位50本の動画を収集した。対象はティックトック150本、インスタグラムのリール150本の計300本で、女性向けの健康、栄養、クリーンイーティングに関するコンテンツを分析した。

 その結果、動画に含まれる健康関連情報の68%が「誤解を招く、または欺瞞的」と判定された。一方、信頼できる情報とされた割合はティックトックで15.3%、インスタグラムでは11.3%だった。

 投稿者の78%は、健康、フィットネス、栄養に関して認められた資格を持っていなかった。資格を持つ投稿者では45.5%が正確な情報を発信していたのに対し、資格のない投稿者では4.7%にとどまった。

 逆に「誤解を招く、または欺瞞的」な情報の割合は、資格を持つ投稿者で40.9%、資格のない投稿者では75.2%だった。

◆「健康的な食事」が厳しいルールに
 問題は情報の正確性だけではなかった。研究チームは、SNS上の健康情報に、健康的な食事への過度な執着を特徴とする「オルトレキシア」に関連する考え方がどの程度含まれているかも調べた。

 全動画の67.3%が「クリーン」あるいは健康的な食事を強調し、28.7%は食べ物に関するルールや制限を示していた。また19.7%は、食品を「良い」「悪い」などと位置づける表現を含んでいた。

 サプリメントや「スーパーフード」を取り上げた動画は75.3%に上った。一方、バランスの取れた食事を伝える内容は15%、食べることの楽しさを示す動画も20.3%にとどまった。

 研究チームは、健康的な食生活そのものを問題視しているわけではない。オルトレキシアでは、「健康的」「純粋」とみなす食品への強いこだわりから、特定の食品群を避けたり、厳格な食事ルールを設けたりする傾向がみられる。SNS上の一部の情報が、こうした考え方と重なっているという。

◆「私のように食べれば、私のような体に」
 さらに目立ったのが、健康と外見を結びつける表現だ。全動画の63%に身体を客体化する描写がみられ、インスタグラムでは78%、ティックトックでは48%に上った。

 インスタグラムでは、動画に登場する人物の70.7%が、筋肉質で引き締まった理想的な体形に該当した。ティックトックでは47.3%だった。またインスタグラムの31.3%では、投稿者が自身の引き締まった体を特定の食事と直接結びつけていた。

 筆頭著者のケイティ・ポーティアス氏は大学の発表で、分析した動画には「私と同じように食べれば、私のような体になれる」と受け取れるメッセージが繰り返しみられたと説明している。しかし健康は遺伝や生活習慣、文化、個人の状況など多くの要因に左右され、すべての人に適した一つの食事法はないという。

 ただし今回の研究は、ティックトックやインスタグラム上の健康・栄養情報全体を無作為に調べたものではない。2025年5月の3日間に、3つのハッシュタグで検索された上位の動画を対象としており、分析も女性向けのコンテンツに限定されている。

 研究チームは、SNS上では健康をうたう情報であっても、厳格な食事制限や外見上の理想を「健康」と結びつけている場合があるとして、情報の発信者や根拠を慎重に見極める必要性を指摘している。

Text by 白石千尋