メキシコ麻薬カルテル、なぜ爆発物攻撃を増やしているのか 車爆弾やドローンも使用
自動車爆弾で被害を受けた警察署前=メキシコ・サカテカス州(8月31日)|Eduardo Pesci / AP Photo
メキシコ全土の麻薬カルテルが、自動車爆弾、爆発物を積んだドローン、即席爆発装置(IED)を使うケースが増えている。こうした傾向は、カルテルへの軍事行動を繰り返し示唆してきたドナルド・トランプ米大統領とメキシコとの、すでに緊張した関係をさらに悪化させる可能性がある。
最近の事件は8月30日夜、メキシコ市の北西約580キロにある中北部サカテカス州の町オホカリエンテの警察署前で起きた。メキシコのオマル・ガルシア・ハルフッチ治安相は、クラウディア・シェインバウム大統領とともにサカテカス州を訪問した28日、200キロの爆発物が爆発し、死者は出なかったものの11人が負傷し、市中心部の住宅60戸以上が損壊したと明らかにした。
サカテカス州司法長官のクリスティアン・パウル・カマチョ氏によると、同州では今年これまでに爆発物を使った襲撃が23件記録されており、そのうち6件は爆発物を積んだ車やバイクを使ったものだった。
ハリスコ新世代カルテル(CJNG)とシナロア・カルテルは、サカテカス州の支配権を巡って長年にわたり抗争を繰り広げてきた。
自動車爆弾による攻撃は、コロンビアなどで見られる暴力に比べれば規模ははるかに小さい。それでも、なぜメキシコで懸念が高まっているのか。その背景を見ていく。
◆メキシコではまれな自動車爆弾、過去には使用例も
ここ数十年にわたってメキシコの自動車爆弾攻撃を追跡してきたコアウイラ大学のビクトル・マヌエル・サンチェス教授は、こうした暴力が使われ始めた初期の例の一つとして、1994年にグアダラハラで、ティフアナ・カルテルがシナロア・カルテル共同創設者のイスマエル・「エル・マヨ」・サンバダ氏を標的にした攻撃を挙げた。サンバダ氏は後にアメリカで有罪判決を受けた。
サンチェス氏によると、最近ではCJNGがメキシコ全土に勢力を広げるのに伴い、爆発物の使用を増やしているという。
当局は、地方都市の中心部で最近起きた2件の爆破事件をCJNGによるものとしている。1件は12月にミチョアカン州で発生し5人が死亡した事件、もう1件は30日にサカテカス州の警察署前で起きた襲撃だ。CJNGは、トランプ政権が外国テロ組織に指定したメキシコの犯罪組織の一つである。
◆爆発物の使用が広がったのは比較的最近
メキシコのカルテルが爆発物をより広く使うようになったのは約5年前からだ。治安部隊や敵対組織を攻撃するためにドローンから爆発物を投下したり、縄張りを守ったり支配したりするために地中に爆発装置を埋めたりしている。
2023年には西部ハリスコ州で、麻薬カルテルが道路に仕掛けた爆弾により6人が死亡し、14人が負傷した。1か月後、軍は脅威が高まっていることを認め、初めて数値を公表。過去4年半に全国で約2800個の爆発装置を押収したと明らかにした。
翌年、当局はミチョアカン州だけで3200個近い爆発装置を無力化した。2025年には同州で爆発装置により兵士8人が死亡し、メキシコで起きたこの種の事件としては最も多くの死者を出したものの一つとなった。当局はこれ以降、全国の最新の数値を公表していない。
アメリカのシンクタンク、ブルッキングス研究所で組織犯罪を専門とするバンダ・フェルバブ・ブラウン氏は、「こうした動きはどれも、メキシコにとって好ましくないものだ」と述べた。「暴力が着実に激化している」とし、「これは間違いなく、恐怖や報復への警戒感を一段と高めている」と指摘した。
シェインバウム氏は28日、全国的に殺人が減少していることは、政府のカルテル対策が機能している明らかな証拠だと述べた。
◆恐怖を広げるための自動車爆弾
専門家らによると、カルテルは敵対組織や当局を威圧し、政府に圧力をかけ、市民の間に恐怖を広めるために自動車爆弾を使っているという。
メキシコの経済研究教育機構(CIDE)で国際研究を専門とするカルロス・ペレス・リカルト教授は、自動車爆弾には注目を集める効果もあり、特に犯罪組織が追い詰められていると感じる局面では、当局に交渉を迫るための圧力手段として使われることもあると指摘した。
◆「テロ」ではなく「カルテルによる暴力」
フェルバブ・ブラウン氏によると、メキシコは長年、カルテルによる暴力を『テロ』と位置づけることに否定的な姿勢を取ってきた。そう位置づけることで外国の介入を招き、観光や投資に悪影響を及ぼしかねないとの懸念が、その理由の一つだという。
政府側が挙げるもう一つの理由は、テロリズムは一般的に政治的またはイデオロギー的な目的を伴うのに対し、カルテルの主な動機は利益だというものだ。
とはいえ、民間人が意図的に標的にされてきたこともある。2008年には、ミチョアカン州の州都モレリアで独立記念日を祝っていた群衆に手榴弾が投げ込まれ、8人が死亡、数十人が負傷した。その3年後には、武装集団がメキシコ北部のカジノに放火し、52人が死亡した。
トランプ政権がメキシコの8つのカルテルを外国テロ組織(FTO)に指定し、その枠組みを軍事行動の正当化に利用したことで、「テロ」という呼称が持つ意味は一段と重くなっている。特に、こうした軍事行動の合法性がアメリカ国内外で問われているためだ。
ペレス・リカルト氏は、対テロ戦略を組織犯罪に適用することには慎重であるべきだと警告した。「テロへの答えは敵そのものの消滅だ」と述べる一方、麻薬取引における敵は単なる武装集団ではなく、違法市場全体なのだと指摘した。
By MARÍA VERZA Associated Press




