フランス猛暑、夏の風物詩に異変 国家試験もツール・ド・フランスも変更
ツール・ド・フランス第6ステージで体を冷やすベン・オコナー選手(7月9日)|Thibault Camus / AP Photo
欧州では、熱波が年々早い時期に始まり、長期化する傾向にある。フランスでは今年、5月と6月に続き、7月6日から早くも3度目の熱波に見舞われている。こうした相次ぐ猛暑は、フランスの夏の風物詩にも変化をもたらし始めている。
◆6月はフランスの国家試験シーズン
フランスの学年度は9月に始まり、翌年7月に終わる。4月始まり3月終わりの日本では1~2月が受験シーズンだが、フランスでも学年末を控えた6月は、ブルヴェと呼ばれるコレージュ(中学校)修了時の国家試験と、バカロレアと呼ばれる高等学校教育修了の国家試験の時期にあたる。いずれも入学試験ではない。なお、ブルヴェの合格は高校進学の必須条件ではない一方、バカロレアは高等教育への進学資格となる。
6月の記録的な熱波の最中に行われたブルヴェの試験では、教室ごとの生徒数を制限したり、扇風機を設置したりしたほか、飲料水を提供したり、例外的に休憩時間を設けたりするなどの対策が取られた。
コレージュ最終学年の14~15歳ごろに受けるブルヴェだが、フランス語の試験は15分の休憩を挟み、開始から終了まで3時間15分に及ぶ。数学と歴史・地理・公民もそれぞれ2時間と長丁場だ。ある生徒は「暑すぎる。こんな暑さでは集中できない」と訴えた(フランス・アンフォ)。
ジェフレ教育相は、試験環境が「客観的に厳しかった」と認めながらも、ブルヴェを予定通り実施したことを後悔していないと説明した。一方、教育関係者らからは、場所によっては35度を超える環境での実施となり、学校によって受験条件が異なりすぎるとの批判も出ている。(ル・モンド紙)
◆バカロレア試験の時間帯変更
高校卒業試験にあたるバカロレアでは、主要な筆記試験の多くが4時間に及ぶ。実技を伴う一部の専門科目では、筆記3時間半に実技1時間が加わり、科目によっては実技や口頭試験が20分から1時間半程度行われる。
今年、フランス本土で行われた一般バカロレアの主要筆記試験は、もともとすべて午前中に予定されていた。一方、口頭試験には午後に行われるものもあり、パリ西郊のリュエイユ・マルメゾンでは、暑さを避けるため地下駐車場で試験が実施された。
フランス本土は、北海道とほぼ同じ緯度から、それより北にかけて広がっている。さらに夏時間を導入しているため、6月末の日没は遅い。筆者の住むフランス北部では22時を過ぎてようやく日が沈み、南部のマルセイユでも21時半近くになる。夕方になっても日差しが残るため、暑さが夜まで続きやすい。一般に午後から夕方にかけて気温が高くなる一方、午前中は比較的過ごしやすい。
今回の猛暑を受け、教育省は2027年の試験から、ブルヴェとバカロレアのすべての試験を午前中に実施すると発表した。
◆ツール・ド・フランスに及ぼす影響
ツール・ド・フランスは、1903年以来続いている大規模自転車レースだ。毎年7月、フランス国内を中心に、ときに周辺国にもまたがるコースで、休養日を含む23日間にわたって行われる。2026年大会の総距離は約3320キロ。コースは毎年異なり、現地にはツール・ド・フランスのファンや近隣の人々が駆け付け、道の両脇を埋め尽くして応援する。その様子は国内外のメディアで連日放映される。
フランスの夏の風物詩のひとつであるこのツール・ド・フランスにも猛暑の影響が及びつつある。今年はスペインをスタート地点とし、3日目の7月6日には国境を越えてフランスへ入った。レース自体は予定通り行われたが、フランス側のコースでは観客の立ち入りが禁止され、広告キャラバンも中止された。選手の走行だけが認められる異例の開催となった。
◆熱波と乾燥で火災リスクが高まる
これは、フランス南部のピレネー・オリアンタル県で4日に発生した火災の影響による。レース前日の5日夜には約1万人の住民が避難を余儀なくされており、翌6日のゴール地点だったレ・ザングルは、火災現場から約50キロの距離にあった。この火災は11日夜、ようやく延焼が食い止められたが、約5000ヘクタールが焼失した大規模なものだった。
また、12日には、第9ステージのコースが通るコレーズ県に熱波の赤色警戒が出ていたため、走行距離が185.5キロから155.5キロへと30キロ短縮された。暑さを理由にステージが短縮されるのは、ツール・ド・フランス史上初めてだ。
◆競技開始時間も変更の可能性
ツール・ド・フランスでは、昼前後にスタートし、午後にかけて走るステージが多い。これは、気温が高くなる時間帯と重なる。これを踏まえ、スポーツ・青少年相のマリナ・フェラーリ氏は9日、「今後数年のうちに、競技時間をこれまでとは異なる形に調整することになる可能性が高い」と発言した。
さらに12日には、プロ自転車選手協会(CPA)も「選手の健康を守るため、夏季レースのスタート時間を変更する必要がある」と改めて求めた。
◆猛暑で7月14日の伝統行事に異変
フランスでは7月14日が国民の祝日で、日本では「パリ祭」として知られる。1789年のバスティーユ牢獄襲撃にちなみ、当日はパリのシャンゼリゼ通りで軍事パレードが行われ、夜にはエッフェル塔を背景に花火が上がる。13日や14日の夜には、消防署で開かれるダンスパーティー「バル・デ・ポンピエ」も各地で催される。
こうした行事はパリだけのものではない。全国各地の市町村で祭りや花火が行われ、筆者の住む人口1万3000人の自治体でも、毎年、町の中心で音楽やダンスのイベントが催され、夜には花火が上がる。フランス人にとって、花火は7月14日を象徴する風景のひとつだ。
しかし、今年は、14日の花火をキャンセルする市町村が増えている。熱波と乾燥で火災リスクが高まっていることを受け、8日の時点で少なくとも10県の県当局が、花火を禁止したり、厳しく制限したりしていた。中には県の決定を待たずに自主的に花火をキャンセルし、その予算を森林火災の被災者支援に充てると決めた町もある。
さらに、猛暑を理由に、パリとその近郊3県では、消防署で13、14日に予定されていたバル・デ・ポンピエをすべて中止すると、パリ消防旅団が10日に発表した。
13日現在、フランスを襲う3度目の熱波は少なくとも週半ばまで続く見通しで、花火や祭りの中止や延期を決める市町村は、さらに増える可能性がある。




