「チップ20%」が自動加算も… アメリカで困惑するW杯客

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 サッカーワールドカップ(W杯)北中米大会開催で、アメリカの開催都市の飲食店は外国人客でにぎわっているという。しかし、チップを払うというアメリカならではの習慣は、外国人観光客には理解しがたい制度として概ね不評だ。その一方で、チップを大切な収入源としている従業員側からは、払わない客への不満も出ており、制度や文化の違いが浮き彫りになっている。

◆払われないのは困る! 広がるチップ自動加算
 この夏、W杯開催都市では、20%のサービス料を自動加算する動きが広がっている。これは、チップを払う習慣のない外国人観光客が、うっかり接客担当の従業員へのチップを払わずに帰ることを防ぐための対策だと説明されている。

 アメリカでは、通常20%のチップが適切だとされているが、外国人客の場合、払わない、または払うとしても著しく少額であることが多々あるという。多忙を極めるなかで、従業員が毎晩すべてのテーブル、すべての会計でチップの必要性を説明する事態を避けるには、サービス料の自動加算は必要だというのが店側の考えだ。フィラデルフィアのニュースサイト『ビリー・ペン』によると、アメリカ人客の大半はこの対策に理解を示しているという。

◆カルチャーショック 外国人から不満噴出
 しかし、チップの支払いに多くの観光客は不満を抱いている。オーストラリアから来たサポーターは、試合のチケット価格だけでも高いのに、チップがさらに出費を押し上げていると述べ、なぜこの制度があるのか理解に苦しむとBBCにコメントした。連れのオーストラリア人も、飲み物を頼むたびにチップを期待されるので、あっという間に高額になると指摘。現地の習慣に従おうとは思うものの、カルチャーショックを受けたと語った。

 ノルウェーから来たサッカーファンは、レストランで20%のチップが期待されていることは知っていたが、バーやカフェでも期待されていることには驚いたとダラスの地元紙オブザーバーに語った。もう一人のノルウェー人ファンは、多くの店舗ではタブレットで支払いをする際、「チップの支払いはあなたの選択次第」というメッセージが表示されるが、実際には毎回選択を迫られる仕組みになっていると述べた。

 もっとも、ノルウェーのファンたちはチップ制度のメリットも指摘。自国では冷淡な接客を受けることが多々あるが、アメリカではチップのおかげで店員の気配りが行き届いているのが素晴らしいとした。ただ、サービスの良し悪しにかかわらず20%を追加されてしまうことには納得がいかないようだった。

◆チップは賃金の一部 負担すべきは誰?
 多くの国ではチップの習慣がないが、アメリカではチップ制度は労働者の賃金において異例なほどに重要な位置を占めていると米ニュースサイト『アクシオス』は指摘。アメリカの連邦最低賃金は時給7.25ドル(約1200円)だが、チップにより最低賃金に達するなら、労働者は時給2.13ドル(約350円)という低賃金でも雇用されることが可能だと説明する。

 チップの習慣は、欧州の封建時代に王族が使用人への賃金とは別にチップを渡していたことに端を発するという。アメリカでは、奴隷制が廃止された後にこの慣習が導入され、黒人労働者を貧困状態に留めておく手段として利用された。非営利団体ワン・フェア・ウェイジは、飲食店は当時自由の身になった黒人の労働力を引き続き使用するため、本来追加のボーナスとして賃金に上乗せされるべきチップを、賃金を代替するものへと変質させてしまったと説明している。同団体は、飲食店労働者にはチップとは別に公平な最低賃金を保証すべきと訴えている。(アクシオス)

 前出のオーストラリア人サポーターは、多くのオーストラリア人観光客は、従業員が十分な報酬を得られるようにするのは顧客ではなく、事業者の責任であるべきだと考えているとBBCに話していた。

 ワン・フェア・ウェイジのサル・ジャヤラマン代表は、チップ制労働者は年間を通じて不安定な状況にあるとし、W杯が彼らの脆弱性に光を当てることを期待しているとアクシオスに語った。

Text by 山川 真智子