記録的熱波のフランス、人々が殺到したのは? 昔ながらの涼アイテムも人気上昇
パリの公共噴水で涼を取る観光客ら(6月26日)|Christophe Ena / AP Photo
欧州を襲った熱波は、フランスにさまざまな負の影響をもたらした。そんな中で、熱波がプラスの効果をもたらした分野もわずかながら存在する。たとえば扇子の普及と映画館人気だ。
◆特に西欧の被害が大きい今年2度目の熱波
2026年に入ってすでに熱波は2度も欧州に押し寄せている。6月17日に始まった2度目の熱波では、西ヨーロッパ各地で気温記録の更新が相次いだ。筆者の住むフランスでは熱波の影響により、列車の大幅な遅れや運休、停電が相次ぎ、休校やスポーツ、音楽イベントの中止も続いた。各市町村は、緑の多い公園を夜間開放したり、冷房のある美術館や博物館の入館を無料にしたりするなどの対策を講じたが、パリでは救急へのコール数が普段より50%増加し、医療現場は逼迫(ひっぱく)。例年と比べ死亡者数も増えており、パリでは2カ所ある葬儀場の遺体安置所が27日から満室状態となっている。
ようやく今週に入って気温が徐々に下がり一息ついたものの、森林火災や海水温の上昇、家畜の大量死亡など、その影響は現在進行形で続いており、被害の全容はいまだ測りきれていない。
◆扇子が大流行
そんな中、熱波の「おかげ」で人気が増しているものは何か。ひとつは扇子だ。もとより、フランスでは扇子を使う人を見かけることが少ない。周囲にも、スペイン旅行やアジア旅行の土産にもらったという人がいたが、大抵はインテリアとして飾られていた。だがこの暑さで、そのインテリアを飾り棚から出して持ち歩くフランス人が続出している。
リヨンにある扇子を扱う小物店では、25ユーロ(約4600円)という決して安くはない扇子が、今年は非常によく売れているという。
◆映画館入館者数の急増
熱波到来以来、映画館の入館者数も急増している。最初の土曜である20日には前週より50%、翌21日の日曜は70%もの増加が見られた。
日本では当たり前のように、どんなビルや店、交通機関にも冷房が普及しているが、フランスでは冷房を備えている施設の方が少ない。筆者が暮らすフランス北部で冷房があるのは、スーパーと美術館、自家用車の中くらいだ。カフェやレストラン、病院、公共交通機関には冷房がないのが普通である。ましてや、自宅に冷房があるという知り合いは皆無だ。おそらく南部は少し事情が異なるだろうが、それでも日本の比ではない。
◆涼もとれる娯楽
そんなフランスにおいても、映画館は空調がついていることが多い。冷房がない場合でも、その用途のために外部の光や音を遮断するつくりになっているため、映画館はつかの間の涼を得られる場所なのだ。
フランス東部モーゼル県の映画館では、インタビューを受けた一人が、サイクリングを予定していたが暑さで中止となり、映画を見に来たと話している。
2024年の時点でフランスには2053の映画館、6355のスクリーンがある。フランスより人口が多い日本の映画館数が594、スクリーン数が3709であることと比べると、その多さが実感できるだろう。
◆コロナ以前の水準に回復なるか?
とはいえ、新型コロナウイルスによるパンデミックはフランスの映画館にも打撃を与え、年々観客は戻ってきているものの、いまだコロナ以前の水準には至っていない。今年は良作も多く、関係者らは今回の熱波が後押しとなり、コロナ以前の水準に近づくのではないかと期待を寄せている。
これはあながちあり得ない話ではない。実際、6月17日~23日の1週間の入館者数は、前年の同じ時期と比べて50%多い312万人だった。これはコロナ以前(2017~2019年)の同時期と比べても36%多い数値だ。
おりしも6月28日には、全国でシネマ祭が始まった。毎年同じ時期に催されるこのイベント期間中は、通常より安価に映画鑑賞ができる。今年は1日目の28日の販売席数が130万席と、前年より45%多かった。これは過去10年で2番目に多い数だという。
現在、7月半ばに熱波の再来が懸念されているフランス。映画館の人気はまだしばらく続きそうだ。




