警察が“兵糧攻め” 廃坑で違法採掘者87人が死亡 南アフリカ
救出用ケージを引き上げる鉱山救助隊員(16日)|Themba Hadebe / AP Photo
違法採掘の取り締まりを目的とした警察の作戦により、結果的に87人の鉱夫が地下で死亡する事態を招いた件について、南アフリカ大統領は調査を命じるよう求められている。この事件は、当局が数ヶ月にわたる膠着(こうちゃく)状態のなかで鉱夫たちを投降させようとした際に発生した。
スティルフォンテインの金山の廃坑で起きたこの悲劇は、警察が昨年8月に鉱山のトンネルで違法に採掘していた鉱夫たちへの食料供給を一時的に遮断したことから始まった。
この戦術は鉱夫たちを地下から退去させることを目的としていたとみられるが、鉱夫たちを代表する団体によれば、その結果、数十人が飢餓や脱水で死亡したという。
裁判所は救助活動を命じ、13日に救助が開始された。先週、金属製のケージで小グループごとに引き上げられた生存者は240人以上にのぼり、そのなかには地下で5ヶ月以上を過ごし、著しく衰弱していた者もいた。警察によれば、生存者全員が逮捕された。
◆「穴を塞げ」作戦
南アフリカ当局は長年にわたり、金が豊富な同国にある6000を超える放置もしくは閉鎖された鉱山で、残留鉱石を探す鉱夫グループを取り締まろうとしてきた。政府関係者によれば、南アフリカは昨年、違法取引により30億ドル以上の金を失った。
警察は2023年末、「穴を塞げ」と名付けた作戦を開始し、いくつかの鉱山を包囲し、地上にいるグループのメンバーが鉱山内に送っていた物資を遮断した。これは、鉱夫たちを自発的に地上に出てこさせ、逮捕することが目的だった。
今回の悲劇が発生したバッフェルスフォンテイン金鉱は昨年8月に警察の取り締まり対象となったが、鉱夫たちの状況が人権団体の注意を引いたのは11月に入ってからだった。人権団体は、数百人の鉱夫が地下2.5キロの深さの場所に閉じ込められ、食料や水などの物資を緊急に必要としていると警告した。
内閣の閣僚の一人、クンブゾ・ンツハヴェニ氏は、当局が物資を送るかどうか尋ねられた際、笑いながら、「犯罪者に援助物資を送ることはない」と述べ、「犯罪者は助けられるべきではなく、罰せられるべきだ」と付け加えた。
◆飢餓を武器とする作戦
労働組合や人権団体によれば、バッフェルスフォンテイン鉱山で当局は飢餓を武器として利用した。鉱夫たちを代表する団体は、警察が一時的に食料を遮断しただけでなく、鉱山への出入りや物資の搬入に使われていたロープと滑車の装置も解体したと主張している。
警察は死亡者に対する責任を否定し、鉱夫たちは閉じ込められていたわけではなく、複数の坑道を通じて脱出可能だったと主張している。
実際に1500人以上が脱出したと警察は述べているが、ほかの鉱夫たちは逮捕を恐れてその場にとどまったという。
しかし、人権団体は、多くの鉱夫が脱出可能な坑道から遠すぎる場所に閉じ込められていたか、危険なよじ登りができないほど弱っていたと指摘している。また、救助活動が始まるまでに大きな遅れがあった責任も当局にあると主張している。この救助活動は13日になってようやく裁判所の命令で開始された。
◆鉱夫たちの正体
鉱夫たちはズールー語で「ザマザマ」と呼ばれ、「どろぼう」や「賭けに出る者」を意味する。政府によれば、通常、武装しており犯罪組織の一員であるという。
多くは不法滞在の外国人であり、当局によるとバッフェルスフォンテイン鉱山から出てきた鉱夫の大多数はモザンビーク、ジンバブエ、レソト出身で、南アフリカに不法滞在していた。
警察は鉱夫から金や爆発物、銃器、200万ドル以上の現金を押収したと述べ、強硬な対応を擁護している。
◆大統領に調査命令を求める声
南アフリカ第2党で連立与党の一員である民主同盟(DA)は、シリル・ラマポーザ大統領に対し、バッフェルスフォンテイン鉱山で起きたことについての調査を命じるよう要請している。
民主同盟は、警察が「違法採掘を取り締まる手段として復讐や罰を容認している」のかどうかも調査で明らかにすべきだと述べている。
また、一部では、当局の極端な措置がバッフェルスフォンテインの鉱夫の大半が南アフリカ人ではなく、不法移民であったことに起因しているのではないかという疑問も出ている。
ラマポーザ大統領はこの惨事についてコメントしていない。
By GERALD IMRAY Associated Press