「おなら散歩」はなぜ体に良い? 専門家も認める効果とは

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 海外で「ファート・ウォーク(おなら散歩)」が話題となっている。カナダの女優で料理人のメアリリン・スミス氏が動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」で紹介し、大きな反響を呼んでいる。夫婦で実践しているというスミス氏だが、その効果とは。

◆食後に少し歩くだけで、腸の不快感が軽減
 スミス氏が名付けた「おなら散歩」は、食後に10分から20分程度の散歩に出ることを指す。適度に身体を動かすことで消化作用が始まるのを助け、腸内ガスによる不快な膨満感や、重い食事による胃の不快感を軽減する効果があるという。スミス氏は、食後の散歩習慣が「とても良好に年を重ねること」につながると説明している。

 英ブリストル大学生理学・薬理学・神経科学学部のダン・バウムガルト上級講師は、学術系ニュースサイト『カンバセーション』への寄稿で、腸内のガスは主に、食物繊維の豊富な食品や消化できない炭水化物の摂取、炭酸飲料の飲用、早食いによる空気の飲み込みなどで発生すると説明している。食後のおなら散歩により、こうした要因で蓄積されたガスを自然に放出できるとバウムガルトは認める。

 記事によると研究でも、 運動中より安静時の方がガスの症状が顕著になりやすいことが判明しているという。ただし、食後の高強度の運動は消化器系に悪影響を与える可能性があるため、軽い散歩が最適だ。

◆歩行に使う筋肉が腸を適度に刺激
 散歩が腸を適度に刺激する現象は、専門家も認めるところだ。米クリーブランドクリニックのスポーツ・運動医学専門医であるマシュー・カンパート医師は、米ピープル誌の取材に対し、このように解説している。

 「歩行やランニングの際には、股関節屈筋、特にPSOAS(腸腰筋)を使用します。結腸はこれらの筋肉の真上に位置しているため、運動時にこれらの筋肉が結腸を自然とマッサージする働きをするのです」

 では、おなら散歩のタイミングは、いつが良いか。ジョージ・ワシントン大学運動栄養科学教授のロレッタ・ディピエトロ氏は、米公共ラジオ(NPR)に対し、「食後30分以内に歩き始めることが重要です」と述べる。「この時間帯は食事を消化している最中であり、ブドウ糖が血流に入ってくるため、筋肉がすぐにそれを使えるためです」
 
 また同氏によると、特に夕食後の散歩が効果的だという。「夕食は1日で最も量が多くなりがちで、多くの糖分と脂肪が血液中を循環しています。それなのに私たちはテレビの前で寝そべるか、就寝してしまう」と述べる。ガスの排出だけでなく、就寝前の血糖値の安定に効果的だという。

◆食後30分にこだわらなくても効果あり
 食後30分を過ぎてしまっても、血糖値のコントロールの観点から、散歩は効果的だという。カンパート氏はピープル誌に、「1日のどの時間帯に歩いても、血糖値の管理には効果があります」と説明する。散歩は、2型糖尿病の予防薬として一般的なメトホルミンと比較し、2倍の効果があることが研究で示されている。

 雨天などで食後のウォーキングができない場合は、室内での簡単な運動で代替できる。ディピエトロ氏はNPRに対し、「悪天候で外に出られない場合でも、立ち上がって、その場で足踏みをし、腕を動かしましょう」と提案する。体内のブドウ糖貯蔵の改善に役立つためだ。

 食後に10〜20分歩くだけの「おなら散歩」には、腸内ガスによる膨満感の軽減だけでく、血糖値コントロールのメリットもあるようだ。

Text by 青葉やまと