3レベルのゾーン規制、4万4000の柵…厳重警戒のパリ 市民に不満・戸惑いも
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パリは6月から徐々にオリンピックのため警備を強化。7月18日からは指定ゾーンに入るにはQRコードが必須となった。大会運営が安全に行われるための措置ではあるが、すでにさまざまな方面に不満や戸惑いを生んでいる。
◆6月半ばから始まった交通規制
パリでは春からすでにオリンピックに関連する一部の区域での交通規制が始まり、6月17日からは、セーヌ川の橋や川沿いの道で段階的な閉鎖が進められている。メトロ(地下鉄)やRER(近郊高速鉄道)も、パリ市内の一部の駅がオリンピック準備のために一時的に閉鎖されるなど、観光客のみならず住民も戸惑う状況が増えていた。
7月14日には、ピアニストのカティア・ブニアティシヴィリが、パリ市庁舎前広場でのコンサートで演奏を予定していたが、交通規制のため到着前に車が停められてしまった。舞台用のドレス姿だったピアニストは、コンサートに遅れぬよう、ハイヒールを脱ぎ同行者の靴を借りて会場に駆けつけたという。(BFMTV、7/19)
Right before entering the stage of the Concert de Paris
20 minutes of marathon right before Debussy to avoid unending traffic of the city. This nice gentleman borrowed his shoes, himself walking in the socks
and saved me from missing my performance. Not very glamorous,… pic.twitter.com/C0gzmmVeGT
— Khatia Buniatishvili (@BuniatishviliKh) July 18, 2024
◆7月18日から始まった3つのゾーン規制
だがこれらの規制も、7月18日に始まった対テロリズム安全ゾーン規制と比べればずっと緩かったと言えるだろう。ゾーン規制とは、パリとその近郊のオリンピック会場やオリンピック村を取り巻く周辺に、グレーゾーン、レッドゾーン、ブルーゾーンの3ゾーンを設け、それぞれ出入りの規制を定めるものだ。
最も規制が厳しいのはグレーゾーンでQRコードを持たない人は、たとえ徒歩であっても入ることができない。レッドゾーンはグレーゾーンの外側で、車やバイクで入るにはQRコードが必要だが、徒歩や自転車なら不要。このレッドゾーンの外側を取り囲むブルーゾーンでは、要所要所で車やバイクの通行チェックが行われる。
該当ゾーンの住民や仕事で通う人は、事前にQRコード申請をする必要があったのだが、実際には周知が徹底しておらず、初日の18日には、チェックポイントで足止めをくらう人が少なくなかった(パリジアン紙、7/18)。
◆右岸と左岸に分断されたパリ
開会式が行われるセーヌ川周辺では現在、特に厳重な警戒が敷かれている。セーヌにかかる37の橋はほとんどが規制下に置かれ、自由に行き来ができる橋は5つだけ。右岸と左岸の行き来も容易ではない状況だ。(ル・ポワン誌、7/18)
セーヌ両岸のうち、グレーゾーンが大きく広がるのは7、8区だ。このエリアには、エッフェル塔やトロカデロ、グラン・パレ、アンヴァリッド、チュイルリー公園と、観光地としても名高い場所が含まれる。
飲食店も数多く点在し、本来であれば人気の高い地域だが、交通規制のために客足はさっぱりとなった。トロカデロ近辺のレストランでは、来店数が70%も減少(レコ・トゥーリスティック、7/22)。
レストランまでたどり着くのが難しくなったため、キャンセルも続出しており、7区のあるレストランはすでに半数の予約がキャンセルされたと嘆く(フランス3、7/21)。
◆4万4000の柵とテラスの禁止
また、パリ市内にはセーヌ沿いを中心に総数4万4000台の柵が設置され、まるで工事現場の様相を呈している。ただでさえパリのレストランはすでに6月からこのかた、売上高が昨年の同時期と比べ30%減少している。(フランス3)
そのため、ゾーン外のレストランであっても、これ以上の損失を回避するため少人数体制の小規模営業に切り替えたり、休業に踏み切ったりする店まで出ている(フランス・ブルー、7/16)。
さらに、開会式が終わるまでは一部のゾーンにおけるレストランのテラス席が禁止となった。テラス席というのは、レストランやカフェの外に設けられる屋外席のことだ。書き入れ時である夏のテラス席は、顧客の人気も高い。現在テラス席設置を禁止されているレストランは約400軒に上り、そのうちの一軒の店主は、この時期はレストランのキャパシティー120席の半数がテラス席だと語っている。(同)
テラス席設置のため、各レストランはパリ市に定められた場所代を払っているが、テラス席禁止の影響の大きさを鑑み、パリ市は7月15日、禁止日については場所代を免除すると発表した。だが、禁止ゾーンにあたらない場所のレストランが自発的に休業した場合は、免除対象とはならない模様だ。(同)
◆パリ郊外やマルシェへの影響
セーヌの少し上流にあたるパリ南東の町イヴリーは、対テロゾーンにはあたっていない。にもかかわらず、イヴリーのセーヌ川で営業する船上レストランは、7月18日から9日間営業を停止するよう、わずか1週間ばかり前に通告された。(アクチュ・パリ紙、7/18)
急な通告を受け、経営者ドゥネ氏は、従業員12人に加え、夏の臨時雇い30人全員に有給休暇を取らせ、すでに入っている予約をすべてキャンセルせざるを得なくなった。同氏によれば、少なくとも10万ユーロ(約1700万円)の損失になるという。(同)
オリンピックの影響で、売り上げが落ちるのは、レストランだけではない。パリ市内では大会期間中、約160回分のマルシェ(朝市)がキャンセルとなり、少なくとも約2000人の露天売りが影響を受けるとみられている。(フランス・アンフォ、7/17)
これらの商人への補償は検討されると約束されているが、まだ、具体的な手続き方法や、どの程度の補償が見込めるかについてはまったく不透明だという。