海外SNSで流行する“マキシング”の危険性 一見無害な「自分磨き」の深層

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 見た目をとにかく良くしたいという「ルックスマキシング(looksmaxxing)」や、ソーシャルスキルをゲーム化したような「オーラマキシング(auramaxxing)」が海外のSNSで流行。その実態とは。

◆「自分磨き」のSNSトレンド
 見た目を最高にするといったような意味合いがあるルックスマキシング。その言葉自体は以前から使われていたようだが、ここ最近、ティックトックやレディットなどでのプラットフォーム上で、人気が集まっている。これは特に若い男性をターゲットにしたトレンドで、見た目をよくして自分を拡張させることを促す現象となっている。

 ルックスマキシングには、ソフトとハードの2種類が存在する。ソフトというのは、自分の努力で実現するというアプローチで、スキンケア、グルーミング、エクササイズなど、身だしなみや体型維持に関する要素が含まれる。シャープな顎のラインを実現するために、科学的根拠のない舌のエクササイズをするといった例もある。一方、ハードは美容整形など、自分以外の力を使った強行手段が含まれる。

 少し意味合いは異なるが、最近では、オーラマキシングという言葉も使われ始めている。いかに自分のオーラを高めるか、どれだけイケてる人になれるかといったようなニュアンスだ。ティックトック上の25万人のフォロワーに対して、自分の「オーラマキシング」に関する日々の取り組みを発信するカナダ出身コンテンツクリエイター、フランクリー・メキは「オーラマキシングとは、自分自身を大切にすること」と語っているが、それが果たして本心なのかどうかについては疑問が残る。

 オーラマキシングは、ゲーム化された形でも拡散している。オーラを高めるアクティビティを実践することで、何ポイント上がった、もしくは何ポイント下がったといったような形で、発信されるという現象だ。オーラの意味合いは、2023年にオックスフォード大学出版局の「今年の単語」に選ばれた、リズ(rizz)と呼応するものがある。

◆マキシングの危険性
 特に若い男性の間で流行する自分磨きの流行は、モテたいという動機、もしくは自分がモテないことに由来する自信喪失や欲求不満などの精神状態と関係しており、意に反して交際関係にないインセル(incel:involuntary celibate)のオンライン上でのはけ口になっていると心理学の研究家は指摘する。トレンドは一見、害がないようにも思えるが、暴力につながるケースもある。
 
 過去、アメリカ・カリフォルニア州の22歳の男性が、モテないことの欲求不満を動機に銃乱射事件を起こし、6名を殺害した。インセルのコミュニティは、ミソロジー(女性憎悪・軽視)的なイデオロギーの考えを助長するリスクもある。

 SNSだけでなく、映画などのポピュラー文化が、間接的にこうした有害な考え方に影響を与えている例もある。2000年のサイコホラー映画『アメリカン・サイコ』で投資銀行に勤務する一方で殺人を繰り返す主人公、パトリック・ベイトマンが、昨今、インセルのコミュニティにおけるアイコン的な存在になっている。ベイトマンのキャラクターが象徴するのは、キャリアにも自分磨きにも成功しているように見えるが、孤独で暴力的な男性像だ。

 見た目の改善を助長したり、ルックスやスタイルの完璧さを称賛したりする流れにメディアが大きな影響力を持つといった現象は、新しいものではない。しかし、SNSやマキシングという言葉によって、より過激な「自分磨き」が浸透することで、その試みや見た目が否定された場合の反動はより暴力的なものになるというリスクを認識しておく必要がありそうだ。

Text by MAKI NAKATA