楽器演奏や歌唱、高齢者の脳に好影響 研究
◆聴くだけではダメ 演奏することで効果あり
研究では、楽器を演奏した経験を持つ人が最も恩恵を受けていたことが判明。ピアノやキーボードの演奏は特に効果があるようで、金管楽器や木管楽器も良いことがわかった。記憶力は記憶した音楽を演奏するために重要であり、それが認知パフォーマンスにも反映されるようだという。さらに、演奏する際には実行機能が必要なため、これも認知能力の向上につながった。
歌を歌うことにも効果があった。合唱団やグループなど社会的な活動に参加することが脳の健康に良いとされているため、実行機能が向上したとみられている。しかし、記憶力の向上は見られなかった。
定期的に楽譜を読む人の数字記憶力が優れていることもわかった。筆頭著者のアン・コルベット教授は「脳は筋肉と同じで鍛える必要がある。楽譜を読むのを学ぶのは新しい言語を学ぶのと似ていて、チャレンジングなことだ」と述べる(BBC)。
一方、音楽をただ聴くだけでは、認知機能の健康には役立たないようだった。認知的な刺激は、人が積極的に活動することによって得られるため、受動的な音楽鑑賞では効果は得られないようだ。
◆音楽の利点を再確認 最も高い認知力を示した集団は?
コルベット氏は、この研究は音楽の利点について知られていることをより大きなスケールで確認し、強固なものとしたとBBCに述べている。実は、研究の対象者のなかで最も高い認知能力を示したのは、現在も演奏を続けているアマチュア音楽家だった。コルベット教授は、高齢になっても楽器を演奏し続ける人には、さらなる効果があると語っている。ただし、人生の後半になって初めて音楽の趣味を持つことの潜在的利点については、今回の研究で検証していない。
学術系ニュースサイト『カンバセーション』に寄稿したイースト・アングリア大学の認知症研究者、マイケル・ホーンバーガー教授は、楽器を演奏したり歌ったりすることは高齢者の脳の健康に効果があるようだが、将来の認知機能低下や認知症の予防にも役立つかどうかは、今回の研究では証拠を示せていないと指摘。また、研究対象者のほとんどが女性であり、高学歴かつ裕福だったため、研究結果が一般の人々にどう当てはまるかは不明だとしている。それでも総合的な認知的・社会的利益を考えれば、年齢を重ねてそうした認知的な刺激に取り組む価値はありそうだと述べている。
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