ペットを飼うと認知機能の老化にどのような影響があるのか 研究

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◆犬は最高の相棒? 認知症予防で注目
 日本の研究では、犬を飼うことで認知症の発症リスクが低下することが示されている。研究チームは、65歳から84歳までの1万1000人以上を対象に、ペットの犬猫の有無、週1回以上行う運動の種類などを尋ね、4年後に健康状態、認知症発症の有無を再調査した。

 その結果、認知症の発生リスクのオッズ比は、犬も猫も飼っていない人を1とした場合、犬の飼い主は0.6、猫の飼い主は0.98となり、犬を飼うことで65歳以上の成人の認知症発症リスクを、4割も減らせることがわかった。

◆犬を飼うと活動的に 「愛情ホルモン」の分泌も増加
 日本の研究では、犬を飼う人は外出頻度が高く、そのため他者との交流が増えて認知症への抑制効果があったとみている。さらに、一般的に犬を飼っていると活動的になり、運動が認知症の患者にみられる脳内のたんぱく質の異常蓄積を減らすとともに、脳の血液の流れを促進させ、細胞の成長と存続を刺激するとされている。運動習慣があり、社会的孤立感のない犬の飼い主は、認知症発症リスクが有意に低かったということだ。

 アメリカの研究では、慣れ親しんだ愛犬との日常的な相互作用の積み重ねが大事だと報告されている。65歳以上のグループについて調べたところ、5年以上継続して犬を飼っている人は、飼育歴5年以下の人やペットがいない人に比べ、認知機能の総合得点が高いことがわかった。

 その理由の一つとして、研究者たちはしばしば「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンの関与を指摘している。オキシトシンは人が楽しい社会的相互作用をしたときに分泌される。人間と犬との絆に関連した感情的な効果に加え、社会的認知や記憶の符号化にも影響を与えることが示唆されており、ペットを長期にわたって飼うことで、オキシトシンが余分に分泌され、認知面でのメリットを高齢者にもたらすのではないかと推測されるという。(サイコロジー・トゥデイ誌

Text by 山川 真智子