アフリカで井戸100基建設 登録者2億人ユーチューバーの動画、賛否両論

ミスタービースト|Tinseltown / Shutterstock.com

◆「アフリカ」で100の井戸を掘った
 ミスタービーストの最新の動画は『アフリカで100基の井戸を作った』と題された約10分のコンテンツで、10日間で約1億回視聴された。動画ではドナルドソンのチームメンバーらが、ケニア各地の農村を訪問し、さく井機械を使って大規模な井戸掘り作業をする様子が記録されている。訪問する各地で大歓迎を受け、井戸掘りのほかにも自転車やパソコンを寄付したことが伝えられており、たくさんの子供たちに囲まれてドナルドソンは満足げだ。今回のプロジェクトによって、ケニアだけでなく、カメルーン、ソマリア、ウガンダ、ジンバブエに住む50万人の人々が、きれいな飲み水にアクセスできるようになったそうだ。

 彼のプロジェクトは、アフリカに住む一部の人々にとっては複雑なものだ。彼が掘った井戸や寄付した物品によって、貧しい村の人々の生活が改善したことは事実だろう。一方で、このような動画によって、たとえばケニアでは自国政府が機能しないことを全世界に露呈することは恥辱的だという懸念の声も上がっている。過去に南アフリカの子供たちに2万足の靴を寄付するという動画を公開した際にも、チャリティを活用して人気を集めるというやり方に批判の声が上がった。

 一方、ドナルドソンは自分のやっていることが批判を受けても、自分のユーチューブ番組を通じて、人助けを行い続けると強気の姿勢を示している。ドナルドソンは、ビースト・フィランソロピーという非営利団体を通じて、井戸掘りプロジェクト以外にも、ソーラーパネルを使った電化プロジェクト、ウクライナ難民への支援、南アフリカのタウンシップにおける孤児院支援などさまざまな慈善活動を展開している。

 ミスタービーストの慈善プロジェクトによって、多くの人々が助けられていることは事実だろう。一方で、恵まれた「白人」が貧困や困難に苦しむアフリカの人々を助けるというような動画のストーリーは、アフリカのステレオタイプ的なイメージをさらに助長するリスクがあり、懸念されている。

Text by MAKI NAKATA