家賃だけで消える学生ローン…困窮する英大学生、学業断念も

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◆アルバイト、部屋の又貸し 最終的に大学断念も
 学生が生活費として借りられる年間の上限額は9978ポンド(約184万円、ロンドンでは1万3022ポンド=約241万円)で、上限額まで借りられるのは世帯収入が2万5000ポンド以下(約462万円)の人となる(BBC、10/26)。

 経済的困難に直面した学生は、違法に部屋を二重にして又貸ししたり、アルバイトを増やしたり、あるいは大学を完全にあきらめるなどして、絶望的な手段を取らざるを得なくなっている、とユニポールのアシスタント・チーフ・エグゼクティブであるビクトリア・トルミー・ラバーシード氏は説明する。

 マンチェスター大学で英文学と中国語を学ぶ1年生のジュリア・ジェラソは、年間8000ポンド(約148万円)の生活ローンを受けており、このサポートで賃料の全額を賄い、残金年間1000ポンド(約18万円)を生活費に充てる。「週末は大抵1食だけなんです。タダで食べられたり、タダでもらえたりするチャンスがあると聞くと、私たちはまず全力で向かいますね」(BBC)

 最近大学院を修了したブリストル大学で心理学を学んだナタリア・グロメック(22歳)は、「私は3日間フルで働かなければならなかったので、十分な勉強時間を確保することができず、かなりストレスがたまりました。私のような学生が、特定の都市での大学進学を断念する前に、何か変える必要があります」と述べる(ガーディアン紙、10/26)。

◆政府の補助金 生活費高騰に追いつかず
 「数年前と比べると、我々は今危機的な状況にある。イギリスのほとんどの地域で、公的な生活費補助金は、学生の実質的な生活費を賄う水準に達していない」とへピの責任者ニック・ヒルマン氏は言う。さらに「短期的には、生活費補助金額を少なくともインフレ率に合わせて引き上げ、長期的には、金利の上昇や新しい規制などの要因によって、現在建設が制限されている新しい学生専用居住施設を促進する措置が必要になる」と強調した。

 142の大学を代表するユニバーシティーズ・UKの広報担当者は、「イングランドの学生に対する政府の生活費補助金額2.8%の引き上げは不十分です。インフレ率の上昇によって、この補助金額では学生の実質的な生活費は補てんされません」と強調する(ガーディアン紙)。

 全国学生組合(NUS)はまた、フルタイムの学生のほとんどが勉強しながらパートタイムで働いているという最近の調査結果を受け、「貧しい学生は、事実上パートタイムで大学に通うことを余儀なくされている」と訴える(BBC)。

 報告書では、賃貸税法や賃貸人改正法の導入によって物件供給がさらに悪化する可能性があると警告し、修正されない場合、学業サイクルに合わせて賃貸物件を貸し出すのではなく、学生をほかの賃借人と同様に扱うことになり、イングランドの学生住宅市場に大きな混乱を引き起こすだろうと述べた。

Text by 中沢弘子