日本ブームで次々と? フランス語になる日本語たち

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◆ビジネスで使われる言葉
 上のリスト中にあるkakémono(掛物)は、掛軸の意味を含まないわけではないが、フランスでは企業内や販売店で主に使われる言葉だ。それが指すのは、お店の壁やスタンドにかけられる縦長のポスターのことだ。

 上述のリストにある言葉以外にも、経営やマネジメント分野に入り込んだ日本語は多い。その一番手はkaizen(改善)だ。改善のための5つのS―seiri(整理)、seiton(整頓)、seiso(清掃)、seiketsu(清潔)、shitsuke(躾)―、気をつけるべき3つのM―muda(無駄)、mura(むら)、muri(無理)―も合わせて使われる。主にトヨタ自動車の経営管理法として説かれており、かなり広く普及している印象だ。

 同様に、kanban(かんばん)も企業内で広く流布している言葉だ。ボードにカードを貼るなどして、仕事の処理や流れを可視化する方法を「かんばん方式」と呼び、やはりトヨタのやり方として広まったものだ。従って、いわゆる「看板」とは少し意味が異なる。

 正直、「おはよう」も知らないフランス人から「カイゼンが必要だよね」と最初に言われた時は、二度聞きしてしまう驚きだった。

◆サブカルチャーからの流入
 漫画人気から、shonen(少年)、shojo(少女)、seinen(青年)という単語も、漫画のジャンルを表す言葉としてフランス語に入っている。すでに本屋へ行けば、shonenやshojoと明示された棚が存在するくらいだ。

 ゲームから広がった言葉としてはkaizo(改造)がある。ゲームファンらが手を加えて難しくしたものをkaizoレベルと呼ぶのだ。特に有名なのがKaizo Mario(改造マリオ)だ。

 また、80年代終わりにリリースされた格闘ゲームから広がった言葉にhadoken(波動拳)がある。これは、必殺技というような意味で、ゲーム好きの仲間同士の会話では今でもそのまま用いられる。

 『北斗の拳』はフランスでも漫画発行に続いてアニメで放映された作品だが、このなかに出てくる「お前はもう死んでいる」と「なに?」というセリフは、フランスでも有名になった。いまでも、ネット上で「Omae wa mou shindeiru」と検索すれば、数多くのフランス語サイトがヒットするほどだ。余談だが、元日本語教師の筆者としては、この文を使えば結果を表す「~ている形」の説明が随分楽だろうなと思わずにはいられない。

Text by 冠ゆき