「福島の処理水放出は安全なのか?」海外メディアはどう伝えたのか

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◆政治は科学を黙らせる 中国の要求は悪魔の証明?
 シンガポールのニュースチャンネルCNAは、南洋理工大学のアルヴィン・チュウ教授の「処理水放出問題は科学の問題であると同時に政治の問題である」という主張を紹介。「誰の友達なのか」で、各国の反応は決まるとしている。

 アメリカ、欧州連合(EU)などは海洋放出に反対していないが、中国は科学的データがあるにもかかわらず、日本の計画を非難し続けている。これは日中関係に根深い緊張が蔓延し、処理水放出問題が政治利用されていることを示唆しているとチュウ教授は指摘している。

 さらに、中国の反対姿勢は、米中の戦略的対立を激化させるのみならず、原発利用に新規参入する国にとってのパートナー選びにも影響すると述べる。福島第一の事故後、原発の供給国だったアメリカは日本を支援するだけでなく、事故処理プロセスへの国際機関の支持の取りつけなどにも尽力した。中国がより大きなシェアを獲得し原子力分野のリーダーとなることを望むのなら、悪魔の証明のようなことはすべきではないと述べている。

◆過去の隠ぺい体質が仇に 東電と政府の信頼回復必至
 もっとも、日本のこれまでの姿勢への非難もある。ニューヨーク・タイムズ紙は、震災以来日本の公式対応を注視してきたという研究者アズビー・ブラウン氏の意見を紹介している。同氏は、震災直後から情報を隠してきた東電と日本政府への不信感は根強いと主張。政府がIAEAに放出監視の協力を要請したことは歓迎できるが、近隣国の理解を得ないまま海洋放出をすれば、透明性の低い前例を作ることになると述べている。

 チュウ教授も、東電の評判の悪さが原因で、処理水が安全で、放出許容基準に適合していることを受け入れられない専門家もいたと指摘する。「科学的根拠に基づく」アプローチを国際社会に受け入れてもらうためには、まず組織の信頼性を示すべきだとしている。

 処理水の海洋放出は、24日午後に開始された。インペリアル・カレッジ・ロンドンのジェラルディン・トーマス氏は、今後はIAEAやほかの機関が集中的に放水された場所周辺を検査するだろうとし、透明性は確保されるという見方を示している。また、水や魚を採取してほかの放射性核種が蓄積していると主張する人も出るだろうが、バックグラウンド・レベル(自然にあるレベル)をはるかに超えるものは見つからないと思うと述べた。同氏は、再度地震が起きて、タンクが割れて漏水するなどの問題が起きれば、世論の反発への対処は難しいと指摘し、放出に理解を示している。(FT)

Text by 山川 真智子