アメリカの公営プール問題 泳げなくなる貧困層とマイノリティ

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◆公営プール減少に危機感 格差によって泳げない子が
 公的支援が減り、プールやレクリエーション施設が民営化されることで、貧困層やマイノリティにしわ寄せがきていると専門家は述べる。2018年の調査によれば、世帯収入5万ドル(約710万円)未満の家庭の子供の79%が水泳の能力がない、または低いという結果になった。さらに、黒人の子供の64%、ヒスパニックの子供の45%、白人の子供の40%が泳げない、または泳ぐ能力が低いことも、この調査でわかった。

 エリザベストン・スター紙によれば、1933年の調査では、頻繁に水泳する人の数は自転車に乗る人の約10倍で、映画に行く人の数とほぼ同じだったという。泳ぎ方さえ知っていれば誰でもオリンピック選手と同じように楽しむことができ、高価な道具もユニフォームも必要ないのが水泳だ。プールを持たない家庭もまだ多く、公営プールは地域社会にとって必要な資源であるため、その閉鎖は再考されるべきだと同紙は主張している。

◆パンデミックも影響 足りないライフガード
 公営プールの閉鎖の理由には、人手不足もあげられている。ペンシルベニア州のフィラデルフィアでは、この2年間に15のプールがライフガード不足のために閉鎖したままにされていたという。市では新規採用者にボーナスを支給したり、大学生には単位を与えるなどの優遇をして人数確保に懸命だという。(フィラデルフィア・インクワイアラー紙

 同様の問題はほかの州でも起きている。ワシントン州のテレビ局KIRO7によれば、パンデミックでプールが閉鎖されライフガードの養成ができなかったために、この状況はしばらく続くだろうとしている。

Text by 山川 真智子