治安対策だけではない、フランス革命記念日の「花火禁止」の背景

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 7月14日はフランスの国民の祝日。シャンゼリゼの軍事パレードとエッフェル塔近辺で上がる花火は日本でも有名だ。この日は、パリだけでなくフランス全国の自治体で、踊れや歌えとにぎやかな祭りが日没まで続く。そうして、ようやく暗くなる23時頃から花火を上げてエンディングというのが恒例である。ところが、今年は複数の自治体が、この伝統の花火を上げないと決めた。それはなぜか?

◆焼かれた車は1万2000台以上
 フランスでは、警官による17歳少年銃殺に抗議する運動から始まった暴動が全国的に広がり、1週間以上続いた。7月5日の内相発表によれば、その時点で、553の市町村が暴動の舞台となっており、公道での放火は2万3878件、燃やされた車は1万2031台、火災の被害を受けた建物は2508軒、放火や破壊の対象となった市役所は105ヶ所あった(フランス24、7/6)。

 さらに、完全な略奪を被った商店は200軒以上、破壊された銀行支店は300店、企業だけに限っても、その被害は総額10億ユーロに上るというのが、フランス企業運動(フランスの最高経営責任者の組合)が4日に発表した見積もりだ(ル・フィガロ紙、7/4)。

◆花火迫撃砲の禁止
 放火、破壊、略奪の限りを尽くすこの暴動では、花火迫撃砲と呼ばれるものが多く用いられた。花火迫撃砲は、もともと専門家が花火を上げるのに用いるものだが、ネットなどで簡単に入手でき、これまでも事故による怪我や火災の原因になったことがある。

 これを憂慮したフランス政府は9日、国民祭での混乱や事故発生を避けるため、国民祭のある週末の花火迫撃砲の販売や携帯、使用を禁止すると発表した。

◆暴動再発を恐れて花火を中止
 また、花火迫撃砲禁止よりもさらに確実なトラブル回避法を選ぶ自治体も出ている。暴動によって市役所に放火の被害を受けた北部のモンサンバロル市は、2日早々に国民祭での花火打ち上げの中止を決定した。そのほか暴動の被害が甚大であったモンタルジ市なども暴動の再発を避けるために花火を中止すると発表している。

Text by 冠ゆき