アメリカの「アサルト・ウェポン」禁止法の行方は 年々増加する銃乱射事件

米バージニア州の販売店に陳列された銃器(2020年8月)|hristianthiel.net / Shutterstock.com

◆民主党州ではアサルト・ウェポン禁止の動き
 連邦規模では合法であるアサルト・ウェポンだが、決してアメリカ全州で合法というわけではない。現在はハワイやカリフォルニア、イリノイ、コネチカットなどの9州で使用や販売が禁止されている、または大幅に制限されているほか、米政治専門紙ヒルによると、4月10日には新たに西部ワシントン州で60種のアサルト・ウェポンを禁止する法案が上院で可決された。州知事が署名後すぐに施行される予定という。

 アメリカ南部や中西部の保守州では全米ライフル協会(NRA)の政治的影響力が強く、銃乱射事件多発よりも銃所持の権利保護を重要視しているため、連邦政府規模での法律が成立しない限りアサルト・ウェポンの規制が行われることはないだろう。テネシー州に至っては、銃規制強化を議会で激しく求めた民主党の州下院議員2人が、共和党過半数の州議会から除名されるという騒ぎまで起きた。しかし2人とも後にそれぞれの地元議会による議決を経て、暫定的に州議会に復帰した。

 多発する銃乱射事件を受け、バイデン大統領は3月、このアサルト・ウェポン禁止法を復活させることを呼びかけた。同法を復活させる法案はすでに上下院に提出されており、民主党が過半数を占める上院では通過すると思われるが、現在は共和党が過半数を占める下院では、たとえ一部でも共和党のサポートがなければ通過は困難だろう。時代の流れは確実に銃規制の方向へ向かっているものの、一部の保守派の政治思想がアメリカをより危険な国にしている。

Text by 川島 実佳