米テネシー州でドラァグショー規制法が成立 保守州で規制の動き

テネシー州のドラァグショー規制に抗議する慈善コンサート「ラブ・ライジング」(ナッシュビル、3月20日)|Photo by Ed Rode / Invision / AP

 他国からは人種や性的指向にオープンで先進的な国だと思われているアメリカ。事実、特にニューヨークやロサンゼルスなどの大都市圏や、エンターテインメント界ではその傾向が強く、ケーブルテレビやユーチューブなどでもドラァグクイーンを含むLGBTQコミュニティの人々を擁するプログラムが目立つようになった。

 しかし大都市から離れて小さな町や農村に行くと、そこには保守的なコミュニティが広がっており、宗教色が強いそれらの地域ではこのような風潮を好ましく思っていないのが現状だ。このような「2つのアメリカ」のギャップは年々深くなっており、特にLGBTQの人々がさまざまな権利を手にしたオバマ元大統領時代の反動か、トランプ前大統領が就任した2016年頃からはそれがさらに深刻化している。

◆全米16州でドラァグクイーン規制の動き
 共和党員が議会で多数派を占める共和党州において、特に政治的ターゲットとされているのがLGBTQの権利であることは間違いないだろう。なかでも特に派手な衣装と化粧が特徴的な女装男性パフォーマー、ドラァグクイーンへの政治的風当たりがひときわ強くなってきており、共和党州ではすでにドラァグクイーンのパフォーマンスを規制するような法律も出始めている。

 CNNによると、南部テネシー州は3月2日、全米で初めて公共の場でのドラァグパフォーマンスを禁止する州となった。厳密に言えば禁止されるのは「成人向けキャバレーパフォーマンス」であり、ストリッパーやトップレスダンサーなども禁止対象に含まれており、ドラァグクイーンだけをターゲットにしているわけではない。しかしそこには「女装および男装で好色的なエンターテインメントを提供する人々」という文言があり、ドラァグクイーンのパフォーマンスも同じ扱いを受けているのである。確かにドラァグショーではきわどい衣装を着けたり、セクシーなダンスをしたりする人もいるが、それはこれらの人々に限ったことではなく女装・男装していないエンターテイナーでも同じことだ。この法にドラァグクイーンだけが含まれているのは「LGBTQ差別」として映っても無理はないだろう。またショーだけではなく、公共の道路を使用するプライド・パレード開催も規制対象になる可能性がある。

Text by 川島 実佳