米国の恋愛マッチングサービス利用状況は? 多様な体験が明らかに

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 恋人探しか、カジュアルな出会いを求めてか、マッチングサイトやアプリの利用経験者数がアメリカの成人10人のうち3人に上ることが、2月2日に発表されたピュー・リサーチ・センターの調査結果によって明らかになった。35歳以下の半数以上に利用経験があることが示され、多様な体験が報告されている。

 全体の30%という利用者数は、同センターがオンラインデートに関する調査を広く行った2019年から変わらない。主任研究員のコリーン・マクレイン氏によると、2015年にマッチングサイトやアプリを利用したことがあると答えたアメリカの成人は15%だったという。

 同氏は「このようなサイトを最近利用しているユーザーと話していると、実にいろいろな感情があることに気づかされます。燃え尽きてしまっている人から意気揚々としている人まで、さまざまです」と話す。

 マクレイン氏の研究のなかでも鍵となるのは、パートナーのいる人の10人に1人が、現在の大切な人との出会いの場がマッチングサイトやアプリであったと回答している点だ。30歳以下に限定すると、その割合は5人に1人まで増加する。

 このようなプラットフォームを利用する理由について、現在または最近のユーザーの44%が長続きするパートナーとの出会いを第一に挙げ、40%が気兼ねなくデートできる相手を探すためと回答した。そして24%がカジュアルなセックス相手を、22%が新しい友だちを探したいと答えている。

 ピュー・リサーチ・センターの報告によると、マッチングサイトやアプリを利用することは、30歳以下の成人にとってはきわめて一般的である。そのうちの53%が利用経験があると回答した一方で、ほかの年代では、30歳から49歳は37%、50歳から64歳は20%、65歳以上は13%に利用経験がある。

 アトランタ在住の消防士、アンディ・ヒロン氏(33)はうれしい驚きを感じている。最近まで、オンラインデートは「少し奇妙なこと」であると考えていた。

 2019年、長く続いたパートナーとの関係を終えたばかりの同氏は、カジュアルなデート相手を求めてティンダー(Tinder)を試してみようと考えた。うまくいかないことも何度かあったが、その後すぐにヒンジ(Hinge)というアプリで夢のような出会いが実現した。

 ヒロン氏は「妻は、ヒンジでの最初のデート相手なのです。とても話しやすい人で、私たちには多くの共通点がありました。初めて実際に会った時、すぐにつながりを感じました」と話す。

 その半年後、2人は結婚した。新型コロナウイルス感染症が拡大し始めた直後であり、現在は1歳の娘がいる。同氏は同じような方法で配偶者と出会った姉からの影響を受け、オンラインデートに乗り気になった。

 ヒロン氏は「人との出会いは、対面して会うというような、普通の方法であるべきだとずっと思っていました。しかし、これが今の時代のやり方なのです」と言う。

 年代を問わず、レズビアンやゲイ、バイセクシャルの成人の51%が、マッチングサイトやアプリの利用経験をもつ。オンラインデートにまつわる体験が肯定的であったとの回答は、57%対48%で男性のほうが女性よりも高い傾向にある。同様に、61%対53%でLGBのユーザーのほうがストレートのユーザーよりも肯定的であったと回答する傾向が強い。そして、こうしたプラットフォームの利用経験を持つ白人もしくは黒人のユーザーは、ヒスパニック系のユーザーよりも否定的な体験を伴ったと回答する割合が高いようだ。

 過去1年以内にマッチングサイトやアプリを利用し、その主な目的がカジュアルなセックス相手を探すことであったと回答した男性は、同様の回答をした女性よりも18%多い。ピュー・リサーチ・センターによる研究は、2022年7月5日から17日にかけて、アメリカの成人およそ6000名を対象とした調査に基づくものだ。

 オンラインデートについて回答者から得た体験はさまざまである。経験者の53%がやや肯定的な、そして14%が非常に肯定的な体験であったと回答した。調査のなかで示された4つの好ましくない行為のうち、1つ以上をともなう体験を報告した経験者は48%を占めた。

 否定的な体験について回答した人の38%は、性的なメッセージや画像が一方的に送られてきたと話し、30%が望まない関係が続いたと報告している。攻撃的な言葉で罵られた経験をもつ人が24%で、身体的な脅威にさらされたと回答する人が6%いる。

 このような体験についての報告は、とくに50歳以下の女性ユーザーに多いようだ。

 カリフォルニア州サンノゼのテック企業でマーケティング業務に携わるリブ・ロックリン氏(22)は、ヒロン氏同様、長く続いたパートナーとの関係が終わり、2022年9月に初めてオンラインデートを試みた。

 同氏は「この地域に来たばかりでしたし、人との出会いを求めて積極的に参加しました。マッチングアプリを使った最初のデートはヒンジで出会った相手でしたが、本当にひどいものでした。その男性は、出会ってすぐにとても気難しくなり、話すことすべてに性的なニュアンスが含まれていました。(中略)結局、私は逃げるように去りました」と話す。

 しかし、ロックリン氏は屈しなかった。プラットフォームをバンブル(Bumble)に変え、そこで出会った男性と楽しい関係を続けている。「どん底まで落ちたので、上に行くしか道はないと思ったのです」と言う。

 オンラインデートの参加者には、安全性に大きな懸念を抱く人もいる。ストーカー行為や性的暴行などの暴力が報告されている状況を受け、身元確認の義務化など、安全対策を求める声が以前からずっと上がっている。全ユーザーに対してこのような確認を義務付けているサイトはほとんどない。

 マクレイン氏は「この件については、アメリカ人のなかで意見が分かれています。マッチングサイトは出会いの方法として安全であると回答する人の割合は48%。一方で、ほぼ同数の49%が安全ではないと答えています」と述べている。

 全体的には、マッチングサイトやアプリには、身元確認が必要であるという意見が多数を占める。

 マーケティング専門家であるが失業中のステイシー・オーバーキャンプ氏(58)は、その危険性を身をもって知っている。同氏は1998年頃からオンラインデートを利用しており、そのなかには、数年におよぶ関係を築いた相手も数人いる。

 サンフランシスコ郊外に住むオーバーキャンプ氏は「オンラインで男性と出会うことに問題を感じたことは一度もありませんが、優秀な男性とオンラインで出会うことは難しいです」と話す。長く続いたある男性とは、相手からのストーカー行為やハラスメントがあり、接近禁止命令をもって関係が終わったという。ほかにも、デートをして初めて男性が破産していることやドラッグを常用していること、嘘をつくことが判明したこともあった。しかし、結婚することを目標に定め、今でも積極的に利用を続けている。

 ひと月に連絡を取り合う相手は30~40人程度だという。同氏は「オンラインでなければ、これほど多くの男性と話したりつながったりするのに5年はかかると思います」と話す。

 ピュー・リサーチ・センターは、8つのサイトとアプリを対象に調査を行った。ティンダーは最も一般的に利用されており、オンラインデート利用者のうち46%に利用経験がある。この割合は、アメリカの全成人の14%に相当する。アメリカの成人のおよそ10%が、マッチ(Match)もしくはバンブルを利用したことがあるとし、6%がオーケーキューピッド(OkCupid)やイーハーモニー(eharmony)、ヒンジを利用した経験があると答えている。

 グラインダー(Grindr)とハー(HER)はストレートのユーザーよりも、レズビアンやゲイ、またはバイセクシャルのユーザーがオンラインデートに利用するプラットフォームとして人気が高い。LGBのユーザーのおよそ34%がグラインダーの利用経験があり、10%がハーを利用したことがあると回答している。

By LEANNE ITALIE Associated Press
Translated by Mana Ishizuki

Text by AP